来年度から全国で実施される「子ども・子育て支援新制度」を前に、横浜市が国の補助基準を先行して取り入れ、保育事業者へ独自に助成する方針を決めた。
背景には新制度実施の目前になっても、国の当面の補助基準が定まらないことに対する幼稚園や認定こども園の不安がある。
国が導入を決めた新制度だ。保育事業者の懸念を放置し、自治体任せにしていいのか。財源をしっかりと明示し、懸念を解消する責務をきっちりと果たしてもらいたい。
新制度は2012年に決まった「社会保障・税一体改革」の目玉だ。認定こども園や幼稚園、保育所などの利用者は共通の仕組みで給付が受けられる。利用者に直接ではなく、市町村が施設に対して払う。
財源には消費税増税分が充てられるが、消費税10%への引き上げが前提となっている。
国は新制度の実施に年1兆円超の追加財源が必要と試算しているが、このうち消費税で賄えるのは7千億円で、残りの財源のめどは立っていない。そもそも、消費税10%への引き上げが延びれば、その7千億円の確保も困難となる。
国は消費税増収分が総額確保できるとされる17年度の補助基準は示しているが、15、16年度は今後の予算編成の中で決めるという方針しか示していない。
国のそうした対応によって、自治体も保育事業者も不安が拭えずにいるのが現状だ。
待機児童の解消につなげようと、新制度の下では、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ認定こども園の普及もうたわれている。
しかし、国が現時点で示している補助基準では減収が見込まれる認定こども園もあるとされ、認定を返上しようとする動きも出ている。認定こども園は親の就労にかかわらず利用できる幼保一体の施設で、需要は高い。新制度で数を増やそうとしている中、看過できない問題だ。
子育て支援新制度は、当然ながら保育の質の向上も目指している。現在の保育の質や教育内容などが維持できなくなるのであれば、何のための新制度導入なのか。
国は財源をしっかりと確保し、保育事業者に不利益が生じないよう補助水準を保つ必要がある。実施までの残り時間は少ない。早急に現状を把握し、対処してもらいたい。
【神奈川新聞】