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川崎で遺体保管所めぐり論争 超高齢化社会の隠れた課題表面化

社会 | 神奈川新聞 | 2014年8月1日(金) 03:00

開設反対を求める住民集会=7月中旬、川崎市中原区の宮内公民館
開設反対を求める住民集会=7月中旬、川崎市中原区の宮内公民館

火葬前の遺体を預かる「遺体保管所」の開設計画をめぐり、川崎市中原区で事業者と近隣住民の論争が巻き起こっている。葬儀の簡素化や高層マンションでは遺体を引き取りにくい住宅事情などが重なり、「一定の需要がある」(県内の葬儀関係者)とされる新業態。一方で住環境の悪化を不安視する住民側は、衛生面や騒音、警備体制など多くの問題点を指摘し、開設反対を求めて署名活動を展開している。超高齢社会に直面する都市部の隠れた課題が表面化したともいえそうだ。

◆業者

遺体保管所は、斎場や葬儀社などに代わり、火葬前の遺体を1~2日間保管する民間の施設。中原区で開設が予定されているのは多摩川に面した宮内地区で、古くからの町工場と一戸建て住宅が並ぶ準工業地域。すでに工事は始まっており、9月開業の日程で整備を進めている。

業者らによると、かつて工場だった施設を所有者から借り受け、倉庫として用途変更する。3階建ての1階部分に最大10体を受け入れる施設を整備し、1時間約千円の料金で最大2日程度、遺体を預かりドライアイスで保管。24時間稼働するという。

業者側は整備理由について、「人口が増えているのに、川崎には遺体を安置する場所が少ない」と、市内の葬儀場事情を指摘。集合住宅などでは、身内の不幸を近所に知られまいと、自宅に安置したがらない遺族もいるといい、開設予定地に近い小杉地区の超高層マンションなどでは物理的に搬入が困難という事情もある。この業者は「迷惑施設なのは分かっている。この町じゃなくていいかもしれないが、このエリアには必要な施設」と説明する。

県葬祭業協同組合(横浜市南区)によると、最近は近親者のみの「家族葬」や、通夜・告別式を行わない「直葬」が増加傾向という。担当者は「インターネットなどで安価な葬式をうたう仲介業者が増えている」と指摘。その上で、「都市部では高齢になるほど、会社や地域とのつながりが希薄になりがち」と、葬儀の簡素化が進むにつれて遺体保管所などの需要が生まれる社会的背景を説明する。

◆住民

「周りから遺体が見えるのでは」「いつも多数の遺体が近くにあるのは精神的ストレス」-。

小さな公民館は、閉館時間の午後9時を過ぎても明かりが消えなかった。7月下旬の説明会。住環境の悪化を不安視し工事中止を求める住民と、あくまで同所での開設を主張する業者との問答は3時間以上続き、最後まで平行線をたどった。

市条例では、建物を改築する場合は周辺住民への説明を義務付けておらず、遺体保管所開設の計画は5月下旬、業者側のあいさつ回りで明らかになった。

住民らは、冷蔵庫を整備しない保管方法や、搬送車両による騒音などを問題視。住宅地に異例の施設ができることで、興味本位のやじ馬が増えることも懸念する。このため、施設に隣接する住民らを中心に「宮内の遺体保管所“葬荘”を考える会」を設立。遺体保管所の開設反対へ町内外で署名活動を始め、行政や議会へも働きかけを強める。

遺体保管所の整備をめぐっては、墓地埋葬法などに定めがなく、行政も指導する立場にはない。近隣では東京・大田区に2011年、同様の施設が開設され、住民らが1万筆以上の署名を集める反対運動を展開。行政側もまちづくり条例を改正し、遺体保管所の事業者が「良好な住環境や生活環境の形成に努めなければならない」と定めた例がある。

ただ、施設は現在も営業を続けており、視察した住民グループのメンバーは、「オープンしてからでは遅い。この1カ月が勝負」とあくまで開設反対にこだわっている。

【神奈川新聞】

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