建設現場でアスベスト(石綿)対策を国が怠ったため中皮腫や肺がんなどになったとして、県内の建設労働者とその遺族52人が、国と建材メーカー43社に慰謝料など計約17億3千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が31日、横浜地裁(始関正光裁判長)で開かれた。国とメーカー側は、いずれも請求棄却を求めた。
原告は、1960年代から90年代後半までを中心に、県内の建設現場で大工や左官、塗装、内装などに従事していた労働者と、その遺族。原告側は、65年には石綿の危険性が国際的に明らかになったのに、国は適切な対策を取らなかったと主張。建材メーカーも、危険性を警告せずに使用を中止しなかった、としている。
原告側の意見陳述で、建設現場で43年間働き、肺がんや石綿肺を患っている原告団長(76)は「これから被害が出てくる若い人のためにもやらなければならない裁判。国と企業は責任を認め、救済制度をつくってほしい」と訴えた。
国は詳しい認否を行わなかった一方、意見陳述し、「当時は石綿の危険性について医学的知見が確立しておらず、規制内容は合理的だった」などと主張した。
石綿被害をめぐっては、同様の集団訴訟が東京や札幌など全国6地裁で起こされている。2012年5月の横浜地裁判決は、国とメーカーの責任を認めなかったが、同12月の東京地裁判決では、国の責任のみ一部認めた。両訴訟はともに東京高裁で控訴審が続いている。今回の訴訟は、横浜訴訟の第2陣として提訴した。