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ウナギ考(上)安ければいいのか

社会 | 神奈川新聞 | 2014年7月30日(水) 11:04

中国から輸入されたニホンウナギ=2013年7月、千葉県成田市
中国から輸入されたニホンウナギ=2013年7月、千葉県成田市

ニホンウナギが国際自然保護連合(IUCN)の「絶滅危惧種」に指定され、初めて迎えた土用の丑(うし)の日。日本伝統の食文化、そしてウナギという種を守るために、われわれがすべきこととは何か。ウナギに携わる研究者や行政、関係団体が一堂に会して27日に開かれたシンポジウム「うな丼の未来2」を通し、考えてみたい。

■待ったなし

水産資源の持続利用を研究する三重大学の勝川俊雄准教授は、壇上でいら立ちを隠さなかった。

「ニホンウナギの減少は、もう20年前から言われていたことだ」

シンポの共通理解として挙がった、(1)漁業の管理(2)漁獲・資源量の調査(3)河川環境の改善(4)情報発信と共有-に関しても「いずれも大切だが、同じ結論を繰り返し言っている。でも何も変わらない。ウナギはもう待ったなしの状況だ」。

日本には“前科”がある。2000年ごろにヨーロッパウナギの養殖に成功した中国からの大量輸入を始め、「格安ウナギ」として消費。資源の95%以上を枯渇させ、同種は08年にIUCNによって「近絶滅種」に指定された。09年からは国際商取引を規制するワシントン条約の対象にもなったが、現在も大量に出回っている。

勝川准教授は続ける。

「食べなくても困らない人は食べない。売らなくても困らない人は売らない。ウナギに代わる商品があるお店は、扱わない。それが一番ウナギのためになる」

水産庁増殖推進部でウナギを担当する太田愼吾漁場資源課長も、「資源保護だけを考えればニホンウナギもワシントン条約の規制を受けた方がいい」と同調する。だが国内のウナギ産業は400億円規模とされ、関連産業を合わせるとその倍以上とも言われる。

「条約の対象となれば、国内の流通量は今の2割程度になる可能性がある。社会経済への影響を最小にしながら、保護を進めていかなければならない」

ただそのバランスを探るうちにウナギは減り続け、1960年代の最盛期に200トン以上あったシラスウナギの採捕量は、ここ5年は10トン前後で推移している。

■困難な規制

資源保護のためになぜもっと漁獲規制をできないのか。近絶滅種のヨーロッパウナギがなぜ平然と流通しているのか。そこにはウナギならではの背景がある。

シラスウナギや成魚の漁獲規制は各県で取り組みが始まっている。熊本県で養鰻(ようまん)業を営む全国養鰻漁業協同組合連合会の村上寅美会長は、「正規ルートとして流通するのは、採捕された量の半分程度。闇業者がいるからだ」と明かす。水産庁の太田漁場資源課長も「国土が狭い日本でもこれが現実。中国などで、ましてや網1本でできるシラスウナギ漁を規制するのは不可能」と話す。

ヨーロッパウナギなどの違法な流通も防ぎたいが、シラスウナギはもちろん、出荷サイズになっても専門家ですら種の判別がつかない。DNA鑑定でしか種を特定できないのだ。

また流通上でも種の表示は軽視、あるいは意図的に隠され、明示されるのは産地のみ。どんな種でも中国で養殖されれば「中国産」、日本で養殖されたら「国産」となる。この曖昧さを隠れみのとし、近絶滅種が流通している。

悪循環に歯止めをかけようと、水産庁はニホンウナギの生息地である中国、韓国、台湾と協議を続け、9月にも養殖の生産量を規制することで合意する見込みだ。入り口でも出口でも規制が難しい中、「養殖池という『器』を規制することで、生産量を制限しようという発想」と太田課長。実効性を第一に練られた対策の効果が注目される。

■乏しい情報

北里大海洋生命科学部でウナギを研究する吉永龍起講師の元に数年前、大手スーパーの担当者が訪れ、こう聞いてきたという。

「ウナギ資源を守るために、われわれにできることはないですか」

吉永講師は、業界こそがヨーロッパウナギを近絶滅種に追い込んだ当事者であり、現在も販売していることなど、矛盾を指摘した。

「担当者は何も言えませんでした。彼らが、どこまで意図的にヨーロッパウナギを入れていたのかはわからない。中国産としか認識していない可能性もある。ただあまりにも現状を知らなすぎるし、無責任」

吉永講師らは毎年、丑の日に合わせてスーパーや牛丼・弁当チェーンのうなぎのかば焼きのDNA鑑定をしている。この大手スーパーをはじめ、今年も各商品にヨーロッパウナギが使われていた。シンポへの参加も打診したが、出席はしてもらえなかったという。

吉永講師は言う。

「販売する側にも、消費者にも、とにかく情報を知ってほしい。ニホンウナギが絶滅危惧種になって騒がれたが、すでに私たちはヨーロッパウナギを絶滅寸前にまで追い込んでいる。そしてそれを今も販売し、食べている。安く食べられれば何でもいいのか。誰がどう考えてもおかしい」

◆ニホンウナギとヨーロッパウナギ

ニホンウナギは東アジア地域に分布するウナギ。グアム島周辺の太平洋でふ化した稚魚が海流に乗って日本沿岸に回遊し、河川や湖で成長して5~10年たつと海に戻り産卵する。河川環境の悪化や乱獲で個体数が減少し、環境省は昨年2月、日本版レッドリストに絶滅危惧種として掲載。国際自然保護連合(IUCN)も今年6月、レッドリストで絶滅危惧種に分類した。法的な拘束力はないが、IUCNのリストはワシントン条約で国際取引規制を検討する際の判断材料となる。

ヨーロッパウナギは欧州各地に生息するウナギの一種。減少したニホンウナギの代替品として一時、中国経由で日本に大量に輸入された。個体数が減り、IUCNによって「極めて絶滅の恐れが高い種」に指定されている。ワシントン条約の規制対象種でもあり、輸出に際しては許可証の発行が義務付けられ、輸入時には書類の確認などが必要になる。中国政府は2015年以降は輸出を認めないとの意向を日本政府に伝えている。

【神奈川新聞】


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