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【社説】ヘイトスピーチ 判決生かし差別根絶を

社会 | 神奈川新聞 | 2014年7月26日(土) 10:33

「(憎悪表現)」とかっこ付きで記されるヘイトスピーチだが、この訳が本質のすべてを表しているとはいえない。事は罵詈(ばり)雑言の次元ではないからだ。

言葉の刃で傷付けられているのは民族的少数者たる在日コリアンである。その基本的人権を無視した「朝鮮人を殺せ」のフレーズは民族差別以外の何物でもない。

それはまた、公言してみせることで差別を正当化し、蔑視観を刷り込み、排斥の空気をあおる。平等と個人の尊厳を尊重することで成り立つ民主主義社会を根底から突き崩す行為に他ならない。

容認、放置が許されないのは従って当然だ。大阪高裁は「在日特権を許さない市民の会」らによる京都市の朝鮮学校への街宣活動を違法な人種差別と認定した。「日本からたたき出せ」「保健所で処分しろ」という言葉の暴力が表現の自由であるはずがなかろう。

判決で特筆すべきは、標的とされた朝鮮学校は社会的に認知された存在で、その民族教育事業は保護されるべきだと言及した点だ。

翻って、神奈川に5校ある朝鮮学校が置かれた現状はどうだろう。

高校無償化の対象から外され、県や横浜、川崎両市は補助金の打ち切りに踏み切った。北朝鮮による拉致問題や核実験という、学校や子どもと無関係な理由が持ち出された政策判断は合理性を欠くと言わざるを得ず、国や自治体の長による公然の差別に等しい。在日の排斥にお墨付きを与え、助長している点でヘイトスピーチと変わらない。

思い致すべきは、在日への差別は今に始まったものではないことだ。朝鮮半島の植民地支配や民族の名前と言葉、文化を奪った同化政策は、差別と対を成す優越思想に基づく所業だった。差別は戦後も制度的に温存され、人々の意識下で再生産されてきた。そして今、過去の反省を示したはずの河野談話や村山談話の見直しを唱える政治家がいて、同様の言説が流布する。

一審に続いて高裁判決が引いた人種差別撤廃条約の4条(c)は「国、地方の公権力、公的公益団体が人種差別を助長、扇動することを許さない」とうたう。排外の言動は突如として街中に姿を現したわけではない。歴史を顧み、足元に巣くう差別の根を断ってこそ、示された良識は生かされる。

【神奈川新聞】

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