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【社説】取り調べ可視化 冤罪防止が置き去りに

社会 | 神奈川新聞 | 2014年7月16日(水) 12:00

大きな一歩ではある。だが「冤罪(えんざい)を防ぐ」という原点が、置き去りにされていないか。

捜査と公判の改革を議論する法制審議会特別部会はこのほど、法務省が示した刑事司法改革の最終案を了承。取り調べ録音・録画(可視化)の義務付けや「司法取引」の拡大などが法制化されることになった。

可視化の対象は、裁判員裁判の対象事件で警察と検察の取り調べの最初から最後までと、検察の特捜部や特別刑事部が独自に扱う事件に限定された。容疑者の言動から十分な供述が得られないと判断した場合は例外とする取調官の裁量を認めた例外規定は維持されている。

議論の出発点は、大阪地検特捜部による証拠改ざん事件を教訓に、全面可視化をどこまで拡大するかだったはずだ。だがいつしか、供述に代わる証拠を得るための新たな捜査手法導入という捜査力強化と“抱き合わせ”で議論が進み、最後は司法取引や通信傍受法の対象事件拡大が前面に押し出された。

可視化は運用面で既に実施されている。最高検は10月から、被害者や参考人の聴取でも可視化を試行することを決めた。2011年3月に試行が始まった検察の独自捜査事件では「本格実施」に移行。さらに身柄を拘束しない在宅捜査の取り調べでも一部で試行を始めている。

こうした方針転換は、証拠改ざん事件など検察の不祥事が相次いだことが理由である。適正な取り調べの確保や供述の任意性・信用性の立証に可視化が役立つことは、これまでの試行で明らかになっている。

であればこそ、さらなる拡大が求められる。可視化が法制化される事件以外でも、冤罪が生まれているからだ。無実の少年が神奈川県警に「自供」させられるなど計4人が誤認逮捕されたパソコン遠隔操作事件を忘れてはならない。痴漢事件も冤罪が多いと指摘されている。

被害者の取り調べでも、性犯罪や子どもの場合、取り調べによる二次被害や記憶の変遷を防ぐことにもつながり、可視化は有効だろう。

最終案には、一定期間の経過後に見直しを検討することが盛り込まれた。法務省は来年の通常国会に関連法案を提出する方針というが、まずは運用でできる限り可視化を進め、見直し時にはすべての事件で可視化が実現できるよう、議論を深めていく必要がある。

【神奈川新聞】

 
 

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