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神奈川区や磯子区などに「準耐火」義務 市が家主に助成も

社会 | 神奈川新聞 | 2014年7月14日(月) 12:43

地震による木造住宅密集地域(木密)の延焼火災を防ぐため、横浜市が検討してきた不燃化建築規制の対象区域が焼失危険性の高い神奈川、西、磯子、中、南区の計1110ヘクタールで固まった。区域内で建物を新築や改築する際は最低でも「準耐火建築物」にすることが2015年度から条例で義務付けられる。家主の負担増を補う支援措置については今年10月から前倒しで導入し、解体と設計工事に最大300万円を助成する。

市防災まちづくり推進課によると、不燃化の建築規制は既に東京都と大阪市が実施しているが、規制区域全体を対象とした助成制度を設けるのは全国初。

規制区域となる「重点対策地域」は、神奈川区(六角橋、白幡西町、三ツ沢下町などの310ヘクタール)、中区(柏葉、山元町、千代崎町など230ヘクタール)、南区(三春台、八幡町、大岡など230ヘクタール)、西区(境之谷、西戸部町、久保町など180ヘクタール)、磯子区(岡村、滝頭など160ヘクタール)の5区で計128の町丁目。

当初は全体で1500ヘクタールほどとみていたが、地域によっては公園や道路など除外すべきエリアがあったため、1110ヘクタールに絞り込んだ。

その広さは市域(4万3500ヘクタール)の2・5%にすぎないものの、市内全体の焼失棟数が最悪の約7万7700棟に上る元禄型関東地震の被害想定では、約4割の約3万1400棟が重点対策地域内で焼失するとの結果が出ていた。次いで延焼危険性の高い「対策地域」(3990ヘクタール)でも3万2600棟が焼失するとみており、両地域で火災による市内の建物被害の8割を占めている。

市はこのうち重点対策地域について、自治体が防火上の制限を加えることを認めた建築基準法の規定を活用。木造2階建てを建てる場合でも、柱や壁などを石こうボードなどの不燃性の材料で覆う「準耐火建築物」とすることを新たに条例で義務付ける。

これにより、住宅内からの出火や周囲からの延焼に対して燃え広がる時間を遅らせる効果が見込める。市は22年度までに焼失棟数を4万3700棟減らす目標を掲げているが、重点地域内で準耐火への建て替えが順調に進めば約1万2千棟分の減災効果が出るとみている。

準耐火を義務付けることに伴って発生する家主の費用負担増の軽減に向けた支援制度では、既存建物の解体に上限150万円、建築時の耐火性能強化に関わる設計や工事に同150万円を助成する。この制度については、15年度からの規制開始までに重点地域で自主的に耐火性能を高めようとする家主を後押しするため、今年10月から前倒しで導入。規制後は制度を拡充し、「燃えにくいまちづくり」を加速させる方針だ。

◇住宅性能向上へ転換 ●解説●

横浜市が建築規制と助成をセットにした大胆な不燃化対策を打ち出した背景には、木密の解消が進まない現状への危機感がある。

市はこれまで、道が狭く公園などが未整備の「危険な密集市街地」に神奈川区や西区、南区などの23地域660ヘクタールを指定。街並みの改善へ地域主体の活動を促してきた。だが地域によって取り組み状況に格差があり、新たに道路用地を生み出して延焼遮断帯を確保するといった改善策には必ずしも結び付いていない。

その一方で、東日本大震災を踏まえた新たな地震被害想定を行った結果、以前より耐震化が進んだことで建物の倒壊は減少が見込まれた半面、木密の延焼リスクは依然として高いことが判明。実効性のある新たな手だてが必要と判断し、個々の住宅の耐火性能を向上させる方針にかじを切った。

そこに家主の費用負担を軽減する助成を組み合わせた意義は大きいが、古い木造住宅は居住者の高齢化が進み、建て替えの意欲が低いとされる。しかも今回の規制区域は1110ヘクタールと広範囲に及ぶ。住まいを燃えにくくする自助を実践し、周囲にも広げていくことで、地域の被害軽減に貢献できる。規制の効果を高めるには、そうした認識を住民の間に広める工夫が欠かせない。

【神奈川新聞】

 
 

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