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時代の正体〈424〉障害者殺傷事件考 「分けない教育こそ」

社会 | 神奈川新聞 | 2016年11月28日(月) 10:18

「障害の有無や学力で子どもたちを振り分けない教育こそ大切」と話す小学校教諭
「障害の有無や学力で子どもたちを振り分けない教育こそ大切」と話す小学校教諭

 【時代の正体取材班=成田 洋樹】相模原市の障害者施設殺傷事件は「学校教育に責任の一端がある」と受け止めている小学校教諭がいる。障害の有無や学力で子どもたちを選別する教育の在りようが、容疑者が障害者に抱いた差別意識の土壌になっていると考えるからだ。グローバル人材の育成が叫ばれ、能力主義の傾向が教育現場で強まる中、「分けない教育」に目を向ける教員たちがいる。 

関心低く 


 「障害の有無によって子どもたちを振り分ける学校教育が、あの事件を引き起こした側面がある」

 ある大学教員が県内の公立小学校教諭らを前に訴えた。事件から1カ月後の8月下旬、県内で開かれた教育研究発表会でのことだ。

 大学教員は障害のある子もない子も共に学ぶインクルーシブ教育が専門。「教育に関わる私たちの問題として考えていかなくてはならない」という問い掛けを県内の公立小学校教諭の本山真美さん(仮名、30代)は重く受け止めたが、周囲の反応は異なっていた。

 「教育にも責任があるなんて、言い過ぎ。大げさだよ」

 普段から障害児教育について語り合う仲の男性教諭は、そっけなかった。問題意識を共有できると思っていただけに、本山さんは二の句を継げなかった。事件後、勤務校の職員会議でも話題に上ることはなかった。

 3カ月余りたった10月下旬には、障害児教育の研究発表会が県内で開かれた。相模原事件のことも取り上げられたが、議論は深まらなかった。

 先の大学教員は発表会の最後の講評で教諭らの姿勢をただしていた。

 「研究会の冒頭、黙とうがなかったのには違和感があった。事件は世界に発信され、サガミハラの名で呼ばれている。足元の神奈川で今後、どのような教育実践を行っていくべきか。よく考えてほしい」

 県内の公立小学校教諭の里崎絵里さん(仮名、30代)も、事件を機に教育の在り方をあらためて考えようという機運が学校現場で高まらない現状を憂える。背景として会議や保護者対応、授業の増加などによる多忙化を挙げるが、教諭の意識の問題も指摘する。「新聞を読んでいない教諭が多く、社会への関心が低い。視野が狭くなっている」

共に学ぶ 


 小学校には障害児らが在籍する特別支援学級があるが、里崎さんは障害児と健常児を分ける「分離教育」に疑問を感じている。勤務校では知的障害児も普通学級で学んでいたからだ。籍は特別支援学級にあったが、同じ教室で毎日過ごしていた。ロッカーやげた箱も普通学級の子たちと一緒だった。

 3年前に受け持った知的障害のある6年生の女子も、その一人だった。授業中は友だちのしぐさのまねをしながら、黒板に書かれた字をノートに記していった。漢字で名前が書かれた約30人のクラスメートのノートを一人一人に正確に配った。漢字の意味は理解できていなくても、字の形で覚えているようだった。

 1学年2、3クラス規模の学校で入学当初から共に過ごしてきた同級生も特別視せずに接していた。清掃をサボっていれば怒ったり、給食のお代わりの分量を巡ってけんかをしたりすることもあった。そこには「自分たちとは違う子」「支援が必要な子」という視線は感じられなかった。

 助け合う姿勢も自然と身に付いているようだった。家庭科の裁縫で「糸通し」が得意な女子は「玉止め」が苦手だった。別の子に玉止めをやってもらう代わりに、糸通しを引き受けることがあった。

 里崎さんは、共に学ぶ意義について子どもたちから学んだことが多いという。「女子は周囲の子たちとの関わり合いの中で、さまざまなことを学んでいった。特別支援学級で1日の大半を過ごし、たまに普通学級に来るような形だったら友だち関係を築けただろうか。いつも一緒にいたからこそ、女子もクラスメートも得られたことがたくさんあったと思う」

 里崎さんは子どもたちの将来を見据えて、公立学校の在り方を説く。

 「障害児もやがて大人になり、生まれ育った地域で暮らすことになるかもしれない。そのときに、旧友やその家族、住民らが支えになることがあると思う。地域の子どもたちが通う公立学校こそ、障害の有無に関わらず一緒に学ぶことを大事にすべきだ」

差別の芽 



 本山さんは2年前、異動先で最初に受け持ったのが5年生だった。

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