変わる街 圏央道「相模原区間」開通(中)地域活性化
社会 | 神奈川新聞 | 2014年6月27日(金) 13:00
◆「観光」新たな競争
圏央道(さがみ縦貫道路)の相模原愛川インターチェンジ(IC)-高尾山IC間の開通は、観光業の関係者も注目する。東名高速と中央道、関越道の高速道路が直結されることで、慢性的に渋滞気味の都心を経由せず、都内西部や北関東などから直接、県内へやって来ることになるからだ。
■集客増に期待大
「今回の開通で関越道とも結ばれ、便利になる。ぜひともこのチャンスを生かしたい」
北関東を代表する四万温泉の柏屋旅館(群馬県中之条町)は、圏央道関連で初めて開通記念プランを企画。ホームページ上で販売を始めた。圏央道の開通区間を利用した宿泊客には特典を付けるなど、集客増に躍起だ。
行政も黙っていない。丹沢・大山観光に力を入れる厚木市は昨年7月、地元を紹介するパンフレットを高尾山の登山口に置くなどしてPRに努めた。登山者が年間300万人ともいわれる高尾山の人気に目を付け、「次は圏央道で丹沢へ」というわけだ。市は伊勢原、秦野市など周辺自治体と協力してPRに力を入れる。
■地元も関心高く
国土交通省などが4月、相模原市内で行ったアンケートの圏央道に期待する項目には、「観光・レジャーに出かけやすくなる」が最多の41・1%。沿線住民が「渋滞緩和」(26・7%)よりも「観光」に関心が高いことが分かった。
地元の観光業関係者も好機ととらえる。相模湖そばのアミューズメントパーク「さがみ湖リゾートプレジャーフォレスト」(相模原市緑区)も、今回の開通後の7月中旬をめどに、初の絶叫系アトラクション「大空天国」を開業させる。運営する富士急行は「開通でアクセスが良くなれば、(東名経由で)横浜方面からも来てもらえる」と、入場者の増加を見込んでいる。
■通過の危機感も
だが、半面で危機感も少なからずある。相模原市内の相模川左岸でキャンプ場を管理する大島観光協会の斎藤邦雄会長は「交通の便が良くなっても通過されては意味がない」と話す。
県央地域の観光関係者の懸念は、海老名ジャンクション(JCT)-寒川北IC間の開通(14年度中の予定)だ。これにより圏央道は湘南の海まで延びる。海のない北関東などの住民にとって、「湘南ブランド」の前には、丹沢・大山といえどもその存在がかすみかねない。
黒岩祐治知事も6月の記者会見で埼玉、山梨、群馬、長野県の住民を念頭に「どんどん海の方に向かって来るだろう。大きな期待が持てる」と話した。さがみ縦貫道路の全線開通後の終点となる茅ケ崎市では、年内にも観光振興ビジョンを初めて策定する予定で、「道の駅」の設置も検討する。
厚木市は「いかに途中にある厚木に降りてもらえるか。『登山』という切り口で登山者を呼び込みたい」とターゲットを定め、“すみ分け”での観光振興を模索する。
全線開通を見据え、早くも県外からの観光客をめぐる新たな地域間競争も始まっている。
【神奈川新聞】