何度でもやり直せる-。そんな思いを込め、横須賀市の建設会社が少年院や児童養護施設などを出た若者たちの就労を支援するNPO法人を立ち上げた。その名も「なんとかなる」。協力企業での職場体験を通じ、自分の希望に合った就職先を探す。住まいも用意し、帰る場所や頼れる保護者がいない若者の自立に向けた一歩を後押しする。
最寄り駅から歩いて5分ほど。NPOが市内に借りた木造2階建ての「寮」は、路地に沿って一戸建て住宅が密集する住宅街の一角にある。現在は4DKに2人が入居。いずれも少年院や鑑別所を出た男性だ。
平日は飲食や建設、介護・福祉など県内外の協力企業で職場体験やアルバイトに汗を流す。期間は2週間程度が基本で、本人が納得するまで繰り返す。週末は、パソコンの学習や家庭菜園での野菜栽培にも励む。
家賃は食費込みで月3万円。寮母や社会福祉士、臨床心理士らがスタッフとして関わり、普段の生活からケアする仕組みだ。
「きっかけさえあれば、人は変われる。そのきっかけを与えてあげることで、彼らの『生き直し』につなげたい」。7月にNPOを設立した建設会社「セリエコーポレーション」社長の岡本昌宏さん(41)は言う。
自身もかつては非行少年だった。中学2年で夜遊びを覚え、たばこやシンナーに手を出した。悪さがエスカレートし、「生きるか死ぬかのどん底」を味わった。鳶(とび)の仕事と出合って立ち直った経験を踏まえ、少年院や刑務所、児童養護施設を出た男女を積極的に受け入れてきた。
会社を立ち上げた2005年以降、雇ったのは10~40代の約50人。「仕事がきつい」「遊びたい」。ほとんどが1、2カ月で離職し、現在も働くのは2人だけ。「短時間で高収入」という誘い文句に乗って職場を去り、振り込め詐欺グループの現金受け取り役になってしまった少年もいた。
なぜ続かないのか。若者が辞めていくたびに自問し、鳶にこだわり続けていたことに気付いた。「社会に出て実際に働いてから、自分でやりたい仕事を決めればいい」。悩んだ末に行き着いたのが今の形だ。
自立を支えるには、職場体験や就労の受け皿となる企業の確保が欠かせない。現在、児童養護施設を出た人は市の事業を活用する形で29社、少年院などを出た人は日本財団の「職親(しょくしん)プロジェクト」に参加する首都圏の6社から職場体験先を選ぶ。
2月以降、業種の幅を広げようと県内外の約300社を回った。すぐに前向きな回答を得られるケースはほとんどないが、興味を示してくれる企業が少しずつ増えていると感じている。
「成長に失敗は付きもの。人生で一番もがいている時期を一緒に乗り越え、一人でも多くここから巣立ってもらいたい」と岡本さん。今後、虐待などで家庭で暮らせない15~19歳の若者を受け入れる「自立援助ホーム」の運営も目指す。