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【照明灯】静かな木

社会 | 神奈川新聞 | 2014年6月11日(水) 11:32

街路樹のヤマボウシが満開だ。決して派手な花とは言えないが、野趣を漂わせて魅力的である。漢字では「山法師」と書き、つぼみの集まりを法師の頭、白い苞(ほう)を頭巾に見立てたとされる▼藤沢周平最晩年の時代小説「静かな木」(新潮文庫)に登場するのは、城下の寺に立つケヤキの老大木である。還暦が間近い主人公は自分を重ね、「あのような最期を迎えられればいい」と思うのだが、人の世は思い通りにはならない。息子が関わった争いに巻き込まれる▼川崎市宮前区の商業施設敷地内で4月、重さが約20キロある街路樹のケヤキの枝が落下し、下を歩いていた女児が重傷を負った。3月にも広島県内で公共施設のポプラが倒れ、女性2人を直撃する事故が起きている▼美しい緑の癒やしや潤いのある景観を求め、本来は山野に自生していた樹木を市街地に植えている。寿命や病虫害、ストレスなどで枯れれば、凶器にもなりかねない。定期的な点検や剪定(せんてい)を行い、十分に管理する必要がある▼「静かな木」のケヤキは、樹皮がはがれて垂れ下がり、「太い枝の一本は、あきらかに枯死していた」と書かれている。主人公が意識する老病死が、心を引かれる大木にも迫っている。円熟した作家の筆が表現した命の定めである。

【神奈川新聞】

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