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【社説】裁判員制度5年 背景の解明にも力点を

社会 | 神奈川新聞 | 2014年6月6日(金) 09:44

刑事裁判に「市民感覚」を反映させる裁判員制度が始まって丸5年が経過した。ことし3月末までに全国で約5万人が裁判員や補充裁判員を経験し、計約6400人に判決が言い渡された。県内では約2800人が選ばれ、判決が言い渡された被告は350人。うち死刑は2人で、いずれも確定している。

制度導入で劇的に変わったのは、裁判の進め方だ。従来の裁判官裁判では、書面で提出される証拠を裁判官が丹念に読み込んで事実認定をしていた。裁判員裁判では、法廷での口頭による陳述やモニターを使った説明が中心になった。

専門用語を多用せず、平易な言葉が使われ、分かりやすくなったことは評価したい。弁護士からも「市民に分かりやすい裁判は、被告にも分かりやすく、納得して判決を受け入れられれば更生にもつながる」との声が上がる。

一方、課題も明確になってきた。

性犯罪や児童虐待では、検察側の求刑を上回る判決が相次いでいる。最高裁が2012年12月にまとめた検証では、強姦(ごうかん)致傷や強制わいせつ致傷、傷害致死などで、裁判官裁判より量刑が重くなる傾向があった。卑劣な犯行に対し、市民が職業裁判官以上に厳しい姿勢で臨んでいると言える。一方で重い量刑となった理由が明確でないケースもあり、公平性への懸念も生じている。

発達障害や精神障害への理解を欠いたまま重い刑が下され、控訴審で覆された例もある。求められているのは、市民感覚を反映させつつ情に流されない丁寧な評議の実現だ。

迅速化の弊害も、浮き彫りになった。公判前整理手続きで事前に争点が絞り込まれすぎることで、被害者が望む真実の究明が遠のき、社会で共有すべき事件の背景の解明が不十分になりかねない。昨年5月に伊勢原で女性が元夫に切りつけられた事件やオウム真理教の元幹部の公判が典型だ。「短絡的」と厳罰を与える傾向の強い介護殺人もそうだ。

社会の映し鏡でもある事件から教訓を学ぶ機会を失わせることは、事件の当事者だけでなく、市民生活にとってもマイナスだ。全国の地裁・地裁支部は、裁判員に量刑の決め方などがきちんと伝えられているか、評議の実態を検証している。併せて、背景の解明にも力点を置くよう、審理のあり方を見直す必要があるのではないか。

【神奈川新聞】

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