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「ガールズ」追跡調査から(下) 受け入れられる安心感

社会 | 神奈川新聞 | 2014年6月4日(水) 12:10

就労体験の場として設けられている「めぐカフェ」=横浜市南区のフォーラム南太田
就労体験の場として設けられている「めぐカフェ」=横浜市南区のフォーラム南太田

大岡川沿いに立つ市民施設フォーラム南太田(横浜市南区)、その1階にある「めぐカフェ」は天井まで届く窓ガラスから差し込む陽光もまぶしく、開放的な雰囲気だ。野菜たっぷりのスープが評判で、昼時には館の利用者だけでなく近所の住民も足を運んでくる。

そのほとんどは、ここが特別な店だとは気付かない。スタッフとして働いているのは、さまざまな理由で家の外に出られなくなったり、働けなくなったりした若い女性たちだ。

アルバイトの女性(24)もそんな一人。3年近く、自宅にこもりがちな日々を送っていた。

専門学校を卒業し、就職先も決まっていたが、採用前の実習でパワハラのような嫌がらせを受けた。それが元で内定を辞退。社会人になっていった友人とも会いづらくなった。「働かなくては、という気持ちはあるけど、怖さと不安があった」と振り返る。

昨年の春、就労体験ができる場としてカフェが紹介されているのをニュースで知った。「すぐに行動に移せない性格だけど、変わりたい、このままじゃいけないと思った」。カフェが連携している若者サポートステーションに電話をかけ、そのサポートを受けながら7月から実習に入った。

小さいころから人と接することが得意ではなかった。内定先での経験もあったため、「緊張と不安でいっぱい」のスタート。バイトの経験はなく、初めての接客業。コーヒーを作る手順を間違えたり、食器を取り違えたり失敗もあったが、一緒に働く人たちが「最初は失敗するもの」「落ち込まないで」と声を掛けてくれた。

「(人間関係で)同じような経験をした人もいて、自分も受け入れられる安心感があった。それが頑張る原動力になった」。日を重ねるにつれて周囲に目を配れるようになり、常連客と雑談もできるようになった。

ことし1月、実習を終えて時給制のアルバイトになった。接客だけでなく、閉店時の片付けやレジの金銭管理も担当する。責任が増した分、意識も高くなった。「自宅にこもりがちだった当時は(今が)想像できなかった」

内定先での経験を思い出すこともほとんどなくなった。働く自信もつき、「いつかはここも卒業しなければいけない」と考えている。「料理をするのが好きなので、調理関係の仕事に就きたい」と明るい表情で話す。

■自信を取り戻す

カフェを運営する横浜市男女共同参画推進協会が実施した就労体験者の追跡調査。アンケートの「役立った点」についての回答が、はたから見ればささやかだが、それがかえって抱えている問題の切実さを物語る。

45・5%が「次の就労に向けて一歩を踏み出すきっかけになった」と回答し、以下は「ほかの人とチームで動く練習になった」が40・9%、「カフェ業務への向き・不向きを知ることができた」が36・4%、「体調管理をして、決められた日時に通うことに慣れた」が31・8%、「働くことの不安・恐怖心が軽くなった」「自分に自信がついた」がともに27・3%、「声を出したり、応答したりする練習になった」が22・7%、「働く者として、身だしなみを整えることができた」「知らないお客さんと接する練習になった」がともに9・1%で続く。

「社会との接点が少なく、働いた経験がなかった人には、定時に通ってくるということも簡単ではない」と同協会。まずは座学で声を出すこと、時間を守ることを学び、実習では接客や調理補助などのほか、働くうえでのルールも身につける。休まず通うことを心掛け、体調管理も意識する。

学校でいじめに遭って中退したり、勤務先でパワハラを受けたり、あるいは病院に通っていたりと、さまざまな背景を持つ人がいる。その経験で自信をなくした人も少なくない。

カフェでは同じような状況にいた女性と働く。指導者役のコーディネーターや先輩格のアルバイトスタッフ、利用客や協会関係者ら、年齢も立場も異なる大勢の人と接触する。

人間関係に苦手意識を持つ人も多いが、特別な気遣いのない利用客を相手に、あるいは同じような状況の同僚と実習を重ねるうちに、自信を少しずつ取り戻していく。同協会は「まず、『就労体験に通えた』ということが自信につながる。声が出るようになった。向き不向きが分かった。仲間がいることが分かった。そうしていくうちに意欲や希望が湧いて、自尊心が高くなっていく」と、その効果を説明する。

■地域へ踏み出す

同協会が、生きづらさや働きづらさを感じている女性のための就労支援講座「ガールズ講座」を始めたのが2009年。仕事を離れて長かったり、働いた経験のなかったりする受講者が本格的に就労する前段階に就労体験を積む場としてオープンしためぐカフェも5年目を迎えた。

同協会は、店から一歩外へと踏み出し、地域との連携にも取り組み始めた。

その一つが市民団体などを受け入れ先にした「社会参加体験事業」。就労体験の参加者は引きこもりになり、社会から孤立していた期間が長い人も少なくない。地域社会で大勢の人と関わり、共同作業を行うことで家や店以外にも居場所があることを実感してもらうのが狙いだ。

同区内の団体などに呼び掛けたところ、受け入れ先が複数集まった。同協会は「地域連携というと言葉は硬いが、実際には目の前にいる人同士のつながり。そうしたネットワークそのものが若い女性にとってはセーフティーネットになるのではないか」と期待する。

就労体験後の選択肢として最も多いのはパート労働だが、パートで働くことさえ以前より難しくなっている。同協会が提唱するのが「パッチワーク・サバイバル」。就労体験での経験、そこでできた人間関係、利用できそうな公的制度などを組み合わせ、困難な状況を乗り切っていく。「完璧でなくてもいい。いろいろな代替品も集め、つなげて支えていければ」と同協会。座学から店での実習、そして地域社会へとフィールドを広げながら、支援の模索は続く。

◆めぐカフェ フォーラム南太田内に設置されている、女性に特化した就労体験施設。ガールズ講座の受講生や若者サポートステーションから紹介を受けた人が接客などを行っている。週に2回程度、1回3時間。まずステップ1(無給、10日間)では声を出すこと、時間を守ることなどを座学で学ぶ。希望者はカフェで実習を行うステップ2(手当付き、20日間)に進む。2010年の開設から6月現在まで67人が就労体験を行っている。営業日は毎週月、火、水、木曜日。

【神奈川新聞】

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