昭和初期に敷設された横浜市電のレール4本が、横浜市西区の石崎川に架かる浅山橋の舗装の下から発掘されたことが2日、分かった。レールは、1923(大正12)年の関東大震災の復興過程で計画されながら、実現しなかった「幻の路線」の一部。専門家は「震災復興の重要な遺物の一つだ」としている。
4月下旬、市が施工する同橋の大規模修繕工事で偶然、見つかった。4本を平行に並べた「複線」が、約25メートルある橋のほぼ全長にわたり敷かれていた。レールは撤去され、近くの資材置き場に保管されている。
同橋は「震災復興橋梁(きょうりょう)」の一つで、震災後の28(昭和3)年に完成した。レールには「1927」などの刻印があり、27年にドイツ・ブルバッハ社で製造されたことが判明。市電保存館(同市磯子区)に展示されている米国製レールとは異なる種類で、珍しい。
同橋を渡る市電も、震災復興の一環で計画された。本紙の前身・横浜貿易新報の26年8月1日付紙面は「復興事業は進捗す」と題し、横浜駅東口から同橋を経由して、平沼付近で国道1号に合流する新路線の構想を紹介している。
横浜都市発展記念館(同市中区)の岡田直調査研究員はレールについて「市電が通ることを想定し、架橋に合わせ一足先に設置されたのではないか」と推測。「新路線が実現しなかった理由は分からないが、復興事業の中で計画された『幻の路線』の存在を示す記録といえる」と意義を説明する。近くの西平沼橋にも、使われないままのレールがあったとの証言がある。
発掘されたばかりのレールを散歩中に見かけ、撮影した鉄道ファンの会社員・海江田広さん(55)=同市神奈川区=は「線路のような物が路面に見えたので驚いた」と話す。
市橋梁課は「歴史的な価値を専門家に相談し、生かし方を考えたい」としている。同館での保存も検討されている
◆横浜市電 横浜市内を走った路面電車。1904(明治37)年、民営の横浜電気鉄道として開業し、21(大正10)年に市営化。関東大震災後、路線が大幅に再編、拡張された。戦後の最盛期には総延長52キロに達したが、72(昭和47)年に全廃された。
【神奈川新聞】