丹沢山域でも深刻化しているシカの食害を減らす管理捕獲が14日、本年度も始まった。昨年度は県から業務を受託した県猟友会の男性会員が滑落死する事故が発生しており、安全に配慮した作業が求められる。
県自然環境保全センターによると、本年度の管理捕獲は同日から2015年3月25日までに設定。「6月の梅雨期など天候の悪いときには無理して入山しない」などのため、昨年度より開始時期を約1カ月前倒しした。
管理捕獲は、第3次県ニホンジカ保護管理計画(12~16年度)に基づき、毎年度、目標頭数などを盛り込んだ実施計画を策定して進めている。本年度分は6月下旬に策定される予定だが、昨年度の目標頭数(450頭)と同程度の見込み。
事故は13年6月19日、清川村宮ケ瀬の丹沢山・堂平で起きた。初めて管理捕獲に参加した男性会員が発砲したシカの状態を確認するために仲間と沢を下りていったが、戻る途中に滑落したらしい。
死亡事故は、03年度に管理捕獲が始まって以来初めて。事故調査と再発防止の検討に翌日から作業を一時中断。初参加の会員を対象にした事前研修会の開催などを県猟友会との間で申し合わせたという。
同会の熊澤收会長は「ほとんどの会員はシカ問題解決への取り組みに参加している意義を感じている。会員は減少、高齢化しており、二度と事故が起きないようにしなければならない」と話している。
県野生生物課の羽太博樹課長は「捕獲頭数のノルマは課していない。現場は山奥の急斜面など厳しく、危険箇所に踏み込まないなど、注意事項をあらためて委託契約の関係書類に明記した」と説明している。
県は、第3次県ニホンジカ保護管理計画の中間年度に入ることから、14、15年度にモニタリング調査を本格的に実施。丹沢の中・高標高域を中心に食害を受けた下草の回復状況などを確認、管理捕獲の効果の検証も進めるという。
◇ネットでアジサイ守る清川村の宮ケ瀬湖畔
6月のアジサイの開花シーズンを前に、清川村の宮ケ瀬湖畔の園地で、シカの侵入防止ネットが登場。シカの食害を防ぐ。
宮ケ瀬ダム周辺振興財団によると、同園地の斜面には約1200株のアジサイが植栽されているが、近年は開花前のこの時期に新芽がシカに食べられる被害が続発。生育状態が悪くなったことから、今年は3月下旬に周辺を囲むようにネットを張るなど、対策を強化した。
同財団は「昼間の観光客と入れ替わるようにシカが夜間出てくる。朝は園地内のふんを掃除している」と対応に苦慮した様子だ。
◆丹沢のシカ
県ニホンジカ保護管理計画でのニホンジカの生息推定数は、第2次計画(2007~11年度)の時点では3700~4500頭だったが、第3次計画(12~16年度)は3000~5500頭としている。国も「保護」から自然環境に配慮して適正水準に頭数を減らす「管理」へ移行する重要性を示している。管理捕獲については、第3次から「シカと森林の一体的管理」など自然再生の観点から水源環境保全税も投入され、強化されている。
【神奈川新聞】