3次元のデータを基に、さまざまなものを立体的に製造できる3Dプリンター。武器も製造できるため、以前から危険性が指摘されていた。業界関係者は「起こるべくして起きた」と規制の必要性を訴えている。
3次元の物を短時間で実物そっくりに作ることができる3Dプリンターは、多くの県内企業でも広く活用されている。
最近では、家電量販店やインターネットでも販売され、中には1台数万円で購入できる家庭向け商品も販売されるなど急速に普及。経済産業省が今年2月に公表した試算によると、3Dプリンターの市場規模は2020年に1兆円に成長する見通しで、製造した部品など関連市場も含めると経済波及効果は20年には21兆8千億円になると予測している。
一方、3Dプリンターは武器の製造も可能。欧米では樹脂製の拳銃を製造する動きが広がる。製造に不可欠な拳銃の3Dデータもネット上に出回り、誰でも入手可能だ。さらに、不正コピーや著作権侵害などの問題も浮上している。
高い利便性が悪用された今回の事件に、3Dプリンターの設計などを手掛ける国内企業の関係者は「データがあればあらゆるものが製造できるという便利さの裏返し。起こるべくして起こった」と指摘する。
経産省は「3Dプリンターがあろうとなかろうと、武器の製造は許されない」とするが、この関係者は今回の事件で「3Dプリンターが悪い物だという認識が広がらないか」と懸念。「国の規制が追い付いていない。一定の規制は必要ではないか」と話した。
◆銃犯罪増える恐れ
銃器評論家の津田哲也さんの話 これまでは金属加工の高度な技術がない限り、銃を製造することはできなかった。3Dプリンターが普及すれば、設計図はインターネットで入手できるので、誰でも簡単に銃をつくれてしまう。銃による犯罪が増えていく恐れもあり、今回の事件は、欧米に比べ危機感が薄かった日本への警鐘となるのではないか。
【神奈川新聞】