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【照明灯】誰も他人を傷つけていない人はいない

社会 | 神奈川新聞 | 2014年5月5日(月) 10:42

多摩丘陵を生かした自然の遊び場はこの日、屈託のない笑顔がひときわ輝く。横浜市青葉区の「こどもの国」は1965年5月5日に開園した。59年の天皇、皇后両陛下のご結婚の際に国民から寄せられた祝い金を基に建設された▼広さ約100ヘクタールのこの地には戦時中、陸軍兵器補給廠(しょう)として砲弾工場や弾薬庫が点在した。いま新緑鮮やかな高台にある平和の碑は、勤労動員された神奈川高等女学校(現・神奈川学園)の卒業生有志が建てた▼「一人でも多くの敵を倒すのだと意気込んでいたから武器造りに参加できるのは誇りだった」。戦後50年の節目に取材した「銃後の乙女」の回顧談である▼「田奈の森 学徒勤労動員の記」(近代文藝社刊)を当時、出版した酒井智恵子さん。忘れ去っていた戦中の記憶をよみがえらせたのは日曜礼拝の牧師の一言だった、と語った。「誰も他人を傷つけていない人はいない」。自分たちが造った砲弾が誰かを傷つけ、あるいは死に至らしめていた、と思い巡らし記録を残した▼本の刊行がひとつのきっかけになり、96年に建った碑には「平和な世界のなかで、こどもたちがのびのびと育ちますように」との願いが刻まれている。こどもの日。今は亡き酒井さんからの伝言をかみしめたい。

【神奈川新聞】

 
 

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