東日本大震災で深刻な被害が出たのは、巨大津波に見舞われた沿岸部に限らない。内陸部では強い揺れによって足元の地盤が激しく損傷し、住まいを奪われた住民も少なくない。盛り土宅地の大規模な崩落が集中した仙台市では、現地での再建を諦め、集団移転を余儀なくされた地区もある。
国土交通省によると、盛り土の表面や全体が地滑り的に崩れる「滑動(かつどう)崩落」は宮城県の169地区が最も多く、うち162地区が仙台市内で起きていた。
震度5強だった太白区の丘陵地では地滑りが発生。その後の調査で、雨水が集まりやすく地下水位が高いという悪条件が判明した。住み続けるのは困難との判断から約80戸が復興公営住宅などに集団移転するが、完成はしておらず、元の場所に住み続けている住民もいるという。
私有財産である宅地の復旧は本来、居住者が担うものだが、影響が極めて大きかったため、市は一定規模以上の宅地については一部で個人負担を求めながら公共事業として実施。対象外となった被災箇所には助成金を出して擁壁などの復旧を支援している。小さな敷地も含め、被災した宅地は5700カ所を超えるという。
栃木県矢板市でも、震度5強で盛り土の滑動崩落が3地区で起き、70棟余りが全半壊した。うち2地区は1960~70年代の造成だった。盛り土が滑らないようにするためのくいを打つといった対策工事を実施し、被災者の生活再建を急いでいる。
【神奈川新聞】