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「旧鎌倉」唯一の銭湯 心も体もぽかぽか、住民「続けて」後押し

社会 | 神奈川新聞 | 2014年4月18日(金) 03:00

旧鎌倉唯一の銭湯「清水湯」。開店と同時に待っていた客が次々と入っていった=鎌倉市材木座
旧鎌倉唯一の銭湯「清水湯」。開店と同時に待っていた客が次々と入っていった=鎌倉市材木座

県内有数の観光地である鎌倉市の旧鎌倉地区に、昔ながらの銭湯が唯一、残っている。「清水湯」(鎌倉市材木座)。家庭風呂の普及が進み、同業者は次々店を畳んでいった。先代が死去し、一度は廃業を考えた。けれど「続けてほしい」という声に応え、これからも地域住民らの体を、心を温める。

午後3時。「お待たせいたしました」と引き戸が開くと、外で待っていた10人ほどがのれんをくぐっていった。沸かしたての湯は45度弱。おなじみの黄色いおけで、顔見知りの女性同士が背中を流し合う。男性たちの談笑が壁を越え、高い天井に響く。夏になれば海水浴帰りの親子連れでもにぎわう。

創業は1955年2月。清水博士さん(54)の父庄次郎さんと母扶美恵さんが夫婦で構えた。博士さんも小学生のころから手伝った。ときに番台に座り、午後11時に店を閉めると男湯、女湯と洗った。

「当時はモップなんてないから、たわしでね」。終わるのはいつも未明。冬、最後に開け放つ窓からの風が冷たかった。燃料を都市ガスに変えた99年ごろまでは毎週末、2トントラック2台分のまきを割った。

小町、御成、長谷、腰越、大町…。旧鎌倉にかつて9軒はあったという。生活の一部だった銭湯には大人から子どもまで多くの客が訪れ、洗い場が空くのを待つ列ができるほど。だが客足は次第に遠のいた。一軒また一軒と店を閉め、ついに清水湯だけになった。

庄次郎さんは2001年に死去。扶美恵さんも10年に亡くなった。残された妹みどりさん(52)、妻の光栄(みつえ)さん(51)だけでは、限界だった。2週間ほど休業し、博士さんは廃業も考えた。だが「続けてほしい」との手紙が届いた。常連客たちからも、再開を望む声を掛けられた。

今は火、木、土、日曜の週4日、午後9時までの営業だ。「今はこれがやっと」。会社勤めの博士さんは週末に、大学1年の長女めぐみさん(18)も日曜日に手伝う。「みんなが『ありがとう』と言って帰って行く。それが不思議で、とてもうれしい」とめぐみさん。

同市長谷の女性(93)は週1回、バスを2本乗り継いで清水湯へ通う。「大きなお風呂に湯気がぽっぽと立って、とっても気分がいいの」。ここで知り合い、声を掛け合う友達も多いという。「体を洗うだけでなく、憩いの場にもなっている」と光栄さん。

博士さんは、いずれ店を畳む日が来ることを覚悟している。だがその日まで、「あって良かった」と思われる銭湯を、家族で守っていく。

◆経営者高齢化で減少県内

家庭風呂の普及やスーパー銭湯の進出などに押されて、県内の銭湯は年々数を減らしている。

県公衆浴場業生活衛生同業組合によると、県内の銭湯は4月現在で計193軒。最も多かった1962年には4倍超の808軒があった。2013年度には10軒、12年度には16軒が店を畳んだ。

70~80代の組合員が多いのが現状で、施設の老朽化も進む。だが設備改修には数千万円掛かるため、子どもに継がせず廃業するケースが少なくないという。

鎌倉市は、65歳以上を対象に250円引きの200円で銭湯を利用できる「入浴助成券」を1人当たり年間72枚発行。だが10年度の市の事業仕分けで市民から「不要」と判定された。09年度約1760万円だった事業費は14年度、約1400万円に減額されている。

【神奈川新聞】


番台には長女めぐみさんが座ることも
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