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秋田・玉川温泉雪崩 被告「事故予見できず」横浜地裁第1回弁論

社会 | 神奈川新聞 | 2014年4月12日(土) 03:00

亡くなった草皆悦子さん(遺族提供)
亡くなった草皆悦子さん(遺族提供)

2012年2月、秋田県仙北市の玉川温泉で起きた雪崩事故で死亡した横浜市泉区の草皆(くさかい)悦子さん=当時(63)=の遺族が、現場の管理や運営を行う「玉川温泉岩盤管理協会」などに約7400万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、横浜地裁(遠藤真澄裁判長)であった。協会など被告側は「事故は予見できなかった」として、請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

ほかに被告は、国有地にある岩盤浴場を借り受けて協会に管理を委託していた社団法人「玉川温泉研究会」と、宿泊先だった旅館「玉川温泉」を経営する「湯瀬ホテル」と同社の社長ら。

遺族側は、研究会や管理協会は、雪崩の危険性が予見できたのに、現場の事故防止措置を取らなかったと主張。同ホテルも、宿泊客に岩盤浴の利用を促しながら、監視や事故発生時の救助体制の整備などを行わなかった、と訴えている。

事故では草皆さんを含む宿泊客の男女3人が死亡、2人が重軽傷を負った。秋田県警は昨年3月、管理協会の会長ら関係者5人を業務上過失致死傷容疑で書類送検している。

◇◇◇

●「妻 なぜ犠牲に」●

結婚から40年、夫婦水入らずの時間になるはずだった。「楽しみにしていた温泉旅行で、妻はなぜ亡くならなければいけなかったのか」。民事訴訟での責任追及に踏み切らざるを得なかった原告の男性(65)の胸には、事故から2年以上がたってなお、晴れない思いがある。

十数年前にがんを発症し、再発を恐れていた悦子さん。重い病気を患った人たちが湯治に訪れる玉川温泉に誘ったのが、男性だった。6泊7日の日程で訪れた初日の2月1日、事故に巻き込まれた。

雪崩は、悦子さんをテント小屋に残し、男性が荷物を取りに旅館へ戻っていたときだった。岩盤浴場に戻ると、周囲の崖から崩れた雪で、一面が真っ白。必死に捜したが、1時間後に発見された悦子さんは、すでに冷たくなっていた。窒息死だった。

予約の際、雪の影響を確認すると、「問題はない」との説明だった。旅館に着いて700メートルほど離れた岩盤浴場に向かった際もみぞれだったが、従業員には注意されなかった。

事故後、現場に監視員の配置や最寄りの旅館との通信手段はなく、事故に対応できるような状況ではなかったと知った。当日は雪崩注意報も出ていた。「本来なら、自分も一緒に死んでいた。私たちは死に場所に連れて行かれたようなものだ」

国から岩盤浴場を借りていた社団法人の理事と、管理を委託された協会の会長、旅館を経営する会社の社長が同一人物であることも分かった。だが、焼香のため男性宅を訪れた旅館側は「法的責任はない」と話すだけで謝罪はなかった。一方で、岩盤浴場は事故からわずか2カ月半で利用が再開された。遺族を顧みず、商売優先の姿勢が許せなかった。

原因究明と協会会長らの刑事責任追及は進んでおらず、仏壇でほほ笑む妻に、何も報告できない悔しさが募った。事故から2年が経過した今年2月、民事訴訟の道を選んだ。

男性は11日の閉廷後、こう決意を語った。「雪の多い地域の安全管理のためにも、今回の事故の責任が問われないことはあってはならない。関係者には、真摯(しんし)な反省を求めたい」

【神奈川新聞】

 
 

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