治療が難しい小児疾患の克服に向け、臨床と基礎の研究室が連携し、新たな治療法の開発が進んでいる。中心となって取り組むのが横田俊平教授(小児科)と田村智彦教授(免疫学)。臨床現場が近い研究環境を生かした試みである。
横田教授らは、小児リウマチ性疾患の中でも難治性の疾患である全身型若年性特発性関節炎(JIA)の治療で大きな成果を上げている。JIAは高熱や発疹を伴い関節の破壊が進行し、小児の「生活の質」を著しく損なう。横田教授らは2002年から生物学的製剤を世界に先駆けて導入し、劇的な治療効果を実証している。
「寝たきりだった子どもが元気に学校に通ったり、プールで泳いだり、生活の質の改善には目を見張るものがある」と横田教授。現在では生物学的製剤は「治療の切り札」として、世界中のJIAを発症した小児に福音をもたらしている。
しかし、横田教授は「JIAの合併症として重要なものにマクロファージ活性化症候群がある」と指摘。この合併症を発症すると、炎症を起こすタンパク質が過剰になり、高熱や多臓器不全に進行する。
横浜市大付属病院の小児科は、国内で最も多くのJIA患者が入院している。横田教授らはJIA患者のうちマクロファージ活性化症候群を合併した患者の病歴や遺伝子を詳細に検討した結果、この病気を合併しやすい患者は免疫をつかさどる遺伝子に特徴があることを突き止めた。現在、患者の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製し、治療に有用な薬剤の開発に向けた研究を進めている。
横田教授は「マクロファージ活性化症候群の克服は、全身型若年性特発性関節炎の患者にさらなる福音をもたらすものであり、臨床と基礎の教室がタッグを組んで取り組んでいく」と話している。
【神奈川新聞】