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国家戦略の現場: 医療分野の規制改革、緩和めぐり疑問符も

社会 | 神奈川新聞 | 2014年4月2日(水) 12:01

国家戦略特区が従来の特区制度と異なる最大の特徴はトップダウン方式による規制改革だ。医療分野では、保険外併用療養の拡充や外国人医師の診療解禁などが検討されている。医療の公平性や安全性と成長戦略の兼ね合いをどのように考えるのか。規制改革をめぐる医療現場などの動向を報告する。

3月12日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会。厚生労働省が国家戦略特区の指定を見据えたある方針を提示した。同協議会は健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する厚生労働相の諮問機関で、医療政策に大きな影響力を持つ。

公的医療保険を使った治療と併用できる「先進医療」は、がんの重粒子線治療などが知られる。国民皆保険制度の下、保険診療と自由診療を組み合わせる混合診療は原則禁止されているが、その例外という位置づけで、国は保険外併用療養という名称を使っている。この日の総会では、厚労省が示した先進医療に該当するかどうかの審査期間を半分にすることが了承された。特区では高度な臨床機能を持つ病院で早期に先進医療を受けられることになる。

「保険外併用療養の拡大は国民皆保険制度を崩し、医療の安全性を損なう」。県内で保険診療を行う医科、歯科の開業医約6千人が加入する県保険医協会は、医療をめぐる一連の規制緩和、成長戦略に疑問を投げ掛けてきた。国家戦略特区についても「医療秩序の破壊、健康保険の弱体化につながる」との見解を表明している。

同協会の高橋太事務局次長は「混合診療について規制改革会議はさらに、患者と医師の希望に応じ、患者が同意すれば保険診療と保険外診療の併用を認めるべきとする意見をまとめた。国民皆保険制度を形骸化させる考えだ。保険診療のルールは、命を守るために必須の社会的規制にほかならない」と指摘する。

■コスト増加

政府が「岩盤」と位置づける医療分野の規制。先進医療の拡大は、医療を成長産業として、大胆な規制改革を進める国家戦略特区の象徴ともいえる。しかし、日本医師会は高額所得者しか新たな治療を受けられなくなることなどの問題点を指摘。「安全性、有効性が確認された医療であれば、保険の対象にすべき」(大久保吉修・県医師会会長)との立場だ。

超高齢社会では医療ニーズの拡大や医療コストの増加が懸念される-。国家戦略特区に対する県と横浜、川崎両市の3者の提案では、県内人口構成の急速な高齢化を踏まえ、健康維持、増進、病気の予防を重視した「健康・未病産業の創出」を打ち出している。

2011年度の国民医療費は、前年度比1兆1648億円(3・1%)増の38兆5850億円。国民1人当たりでは30万円を初めて突破し、いずれも5年連続で過去最高を更新した。65歳以上の医療費は21兆4497億円で全体の55・6%を占めた。

医療産業に詳しい東大の木村廣道特任教授は「国民医療費の増加などを考慮すれば、産業化によって健康・医療に関連するサービスの質を高めながら、効率化、低コスト化し、きめ細かく需要増に応えていく必要がある」と指摘。高齢者の「生活の質」を確保するためにも、公的保険ではカバーしきれない健康を維持、増進するための多様なサービスの創出を図るべきとしている。

■持続可能性

政府が今国会に提出した健康・医療戦略推進法案。先端研究の実用化促進とともに、「健康長寿社会形成に資する新たな産業活動の創出、活性化」を打ち出している。和泉洋人首相補佐官(内閣官房健康・医療戦略室長)は「国民皆保険制度を守るためにも健康医療産業がしっかりと成長すべき。健康寿命を延ばすことが、日本の医療制度の持続可能性につながる」との認識を示す。

同戦略と併せて政府は、がん、認知症克服へ向けた研究など国家的な研究開発プロジェクトを一元的に支援する新たな独立行政法人「日本医療研究開発機構」を設立する方針だ。研究成果の早期実用化へ臨床研究・治験の体制を強化するなどして、約2兆円(11年)に上る医薬品・医療機器の貿易赤字の黒字転換を図る構えだ。

健康・医療分野を成長産業と位置づける一連の動きは、国家戦略特区とも密接に関わる。

11年12月に指定された国際戦略総合特区(川崎臨海部・殿町3丁目地区)での経験を踏まえ、実験動物中央研究所の野村龍太理事長は「公平な日本の医療制度の素晴らしさを残しながら、時代に即した医療制度に緩やかに移行するのが望ましいのではないか。超高齢社会の課題を解決するためにも、今回はほかではできない医療技術の創出、医療行為の実践ができる場にしてほしい」と話している。

京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区をテーマにした県保険医協会の医療問題研究会 =2013年6月

■県、横浜市、川崎市の共同提案■

【主な規制緩和項目】(1)健康・未病産業など新たな産業創出が期待できる項目▽機能性食品の機能性表示認証の緩和▽個人の健康・医療情報活用のためのルールの早期整備(2)ドラッグラグ・デバイスラグの解消など、医薬品・医療機器の早期の市場展開が期待できる項目▽再生・細胞医療の薬事承認制度の規制緩和▽臨床試験に係る手続きの簡素化および臨床試験の新たな専用病床制度の創設(3)高度な研究開発の促進が期待できる項目▽外国人医療人材の国内での医療従事緩和▽優秀な外国人人材等の出入国管理上の優遇措置の拡大

【重点施策】(1)健康・未病産業の創出(2)最先端医療関連産業の創出(3)イノベーションを生み出す基盤構築

【神奈川新聞】

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