「父と母の愛、そして別れの悲しさが伝わってきて、読むたびに涙が出ます」
池本俊昭さん(75)=横浜市港南区=は母、紀美さん(享年24)が残した2冊のノート「私の思い出の結婚記」「主人の出征中日記」から両親の深い愛情を知った。顔を見ることなく沖縄戦で命を落とした父、俊雄さん(享年31)が考えてくれた自身の名前の由来も知ることができた。
しかし、色あせた日記から浮かび上がるのは、新婚時代の淡い記憶だけではない。若かりし両親が直面した戦争の悲惨さがつづられていた。
いけないのだけど…泣かせて下さい
裁判官だった俊雄さんの召集を紀美さんが知ったのは1944年9月7日。挙式のわずか1年3カ月後だった。紀美さんはこの日、出産を待たずに出征する夫への思いを書き残した。
〈泣いてはいけないのだけど…。泣くだけ泣かせて下さい。やはり私は悲しいのです。可愛(かわい)い子供のせめて生まれてからと思っていたのに…。悲しいの。人生って楽しみばかりないのね〉
そして、夫の無事を祈る言葉も。

〈体だけは大切にして頂戴ね。用心はされるけれど、あまり丈夫でないから。そして、そして…