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名護市長選が問いかけるものは 元川崎沖縄県人会会長・仲宗根修さん、基地問題を「わが事」に

社会 | 神奈川新聞 | 2014年1月22日(水) 12:16

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古移設が最大の争点となった名護市長選で示された「受け入れノー」の民意が意味するものは何か。「基地の島は昔から少しも変わっていないんだ」。沖縄出身で、長年、川崎沖縄県人会会長を務めた仲宗根修さん(77)はそうこぼした。故郷に戻ったいま、本土との温度差を知る古老はあらためて考え込む。なぜ沖縄だけが揺れなくてはいけないのか-。

移設受け入れに反対する稲嶺進氏の再選の報を静かに聞いた。

「想定通り。反対派が当選しない方がおかしい」

4155票差の勝利。移設推進派候補との差は前回4年前の1588票からさらに広がっていた。

40年以上暮らした川崎市川崎区を離れ、沖縄に戻ったのは2012年10月。普天間飛行場に足を運んでみた。国道沿いに延びるフェンス、市街地の頭上を覆う機影、そして耳をつんざく轟音(ごうおん)。「何も変わらねえな」。分かってはいたが、流れた歳月を思い、胸に熱いものが込み上げた。

久米島出身。琉球警察の刑事だった。米軍統治下で米兵の犯罪は横行していた。容疑者は基地にかくまわれ、捜査は思うに任せない。泣き寝入りの被害者。「仕事に嫌気が差した」

パスポートを手に海を渡ったのは、沖縄が本土復帰を果たす3年前の1969年。味の素横浜工場に職を得て、定年後、県人会の会長を任されてきた。

国土の0・6%にすぎない島に在日米軍基地の74%が集まる。その景色が変わるところを見たいと願ってきた。「市民団体が上げる『基地はいらない』の声さえ昔から変わらない。連中も自分も年を取ったことぐらいかな、変わったことといえば」。自嘲(じちょう)したような笑いが交じった。

忘れられないセリフがある。

「沖縄は大変ですね」

川崎にいたころによく掛けられた言葉だ。地元選出の国会議員の口からも聞いた。同情か、慰めか。仲宗根さんにはこう聞こえた。

「悪いけど、沖縄は我慢してくれないか」

しょせんは人ごとなのか。「我慢してくれれば丸く収まるんだから、という思いの表れ。全部、沖縄に押し付けているんだ」

昨年12月、仲井真弘多(ひろかず)知事は政府の辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認した。公約を翻す振る舞いは地元の反発を招いた。だが、仲宗根さんは一定の理解を示す。

「苦渋の選択だ。政治家として判断すれば当然ノーだが、手続きに誤りがなければ承認するほかない。知事は長く官僚をやっていたから、よく分かっているのだろう。承認も結局、政府に押し付けられたんだ」

政府だけではない。鳩山由紀夫首相(当時)が「最低でも県外移設」を掲げた民主党政権時代、政府から全国の知事に沖縄の基地負担の軽減に向けた協力が求められた。

臨時の全国知事会議で出された声明は「負担の軽減が必要であることを理解する」。だが具体的な方針は明記されず、「今後とも真摯(しんし)に対応していく」との表現にとどめられた。これまで真摯に対応してきたことなどなかったのに「今後とも」とは-。負担を分かち合う姿勢は感じられなかった。

その後の国政選挙で基地問題は争点からも影を潜め、「仲間内でよく言うんだ。革命でも起こらなければ基地はなくならないって」。

19日の名護市長選で突きつけたノーは抵抗の意思表示であるには違いない。では、稲嶺氏に投じられた1万9839票は「革命」たり得るのか。

「基地はもういらない。これは沖縄から全国へのメッセージでもある。全国民が自分の問題として沖縄のことを考えられるようにならない限り、何も変わらない」

示された民意は、本土にこそ届いてほしい。

◆実態踏まえた議論を、元沖縄タイムス論説委員・屋良朝博さん

名護市長選で示された移設受け入れ反対の民意。今後の見通しを地元紙の沖縄タイムスの元論説委員でフリーライター、屋良朝博さん(51)に聞いた。

今回の選挙は通過点にすぎない。前回2010年の市長選でも稲嶺氏が当選したが、民主党政権の「辺野古回帰」によってノーの声が無視された前例があるからだ。

移設反対の思いは強固なものになっている。だが、政府・自民党には民意を軽視する横暴さも感じる。計画を強行するだろう。

対立が激しくなれば手を引く可能性はある。その場合、危険な普天間飛行場を移してあげるのにという政府の論理でもって、問題が解決しない責任を沖縄の側に押し付けるだろう。それはしかし、返還で日米が合意してから18年間放置し続けた普天間の問題をさらに放置することにほかならない。

基地問題は原発の問題と一緒だ。原発が福島だけの問題ではないように、沖縄だけの問題ではない。ただ原発は代替エネルギーなどについての議論がなされているが、基地問題は沖縄に押し込められてしまっている。

森本敏前防衛相は退任前の会見で「軍事的には沖縄でなくてもいいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域」と述べた。これは国内政治が「本土が嫌だと言っているから沖縄に押し付けている」ということ。県外移設が困難な理由は別のところにあるのに、「抑止力」や「地理的優位性」を持ち出して正当化しようとしているだけだ。

在日米軍の兵力は政府でさえ正確に把握していない。本土のメディアも部隊やその役割について理解しないまま報じ、抑止力や地理的優位性についての誤解は全国で広がっている。求められているのは、実態を踏まえた本質的な議論だ。

【神奈川新聞】

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