
「気持ちは痛いほど分かる」。3年前、徐々に筋肉が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された川崎市麻生区の男性は、京都で起きた女性患者の嘱託殺人事件を受け、自身のブログにそうつづった。体が徐々に動かなくなる恐怖、不安、絶望感。他人に頼らなければ生きていけない自分に生きる価値はあるのか─。自問し続けてきた男性は今、前を向く。自らの経験を生かし、「障害者が使いやすい福祉機器の普及開発」を支援することが新たな目標だ。
「病名はALS。発症からの余命は3~5年です」
中島清雄さん(67)は2017年11月、神経専門の研究病院でそう告げられた。
中島さんはサラリーマンを経て34年前、翻訳や通訳、イベント企画などを手掛ける企業を設立した。仕事は順調で最盛期には約15人の従業員を雇うなど、順風満帆なキャリアを積んでいた。
だが16年ごろから、右足に違和感を覚え始めた。大学病院などで検査を受けたものの、「異常なし」。ようやく診断が出たものの「何を言われているのか、誰のことなのか」理解できなかった。