7月の記録的な大雨で、県内で崖崩れによる土砂災害が三浦半島を中心に少なくとも39件発生し、現場の95%が土砂災害警戒区域だったことが、県の調査で分かった。小規模な崩落が多く、人的被害は報告されていないものの、調査が終わっていない被害現場もあり、件数はさらに膨らむ見通しだ。
県砂防海岸課によると、39件は4~20日に横浜、横須賀、鎌倉、逗子、三浦の5市と湯河原町で発生。市町村別の内訳は、横須賀市が17件と4割超を占め、三浦市8件、鎌倉市7件と続いた。逗子市は4件、横浜市で2件、湯河原町が1件だった。
個々の現場の状況を調べたところ、三浦市内の2件を除く37件が土砂災害警戒区域に指定された急傾斜地だった。県はこうしたエリアで崖崩れが多発した要因について、「熊本のような豪雨ではなかったが、長雨だった上、断続的に強い雨も降ったためではないか」とみている。横浜地方気象台の観測では、三浦市内の雨量は7月上旬が平年値の3・5倍。中旬は3・7倍に上った。
三浦半島に大雨警報が出た18日は、横須賀、鎌倉、三浦市などで14件が続発した。三浦市内の警戒区域では、崩落した土砂が住宅に迫った現場もあった。
19日夜には、国道134号沿いの逗子海岸付近で警戒区域の急傾斜地が高さ約30メートル、幅約10メートルにわたって崩落。隣接する逗子海岸ロードオアシスに樹木や土砂が流れ込んだ。
21日以降に崩落の情報が寄せられた現場も複数あるため、県は調査を継続している。
国土交通省の集計では、7月豪雨による土砂災害は全国で827件(31日現在)確認され、17人が死亡した。最多の熊本県(221件)を含め、岩手から鹿児島まで37府県に及んでいる。
土砂災害警戒区域 急傾斜地の崩壊(崖崩れ)や土石流、地滑りによって人命に危害が生じる恐れのある斜面や渓流などの区域。土砂災害防止法に基づいて都道府県が指定し、ハザードマップなどによる危険性の周知と避難体制の整備が求められる。警戒区域のうち、特に危険性が高い場所は土砂災害特別警戒区域に指定され、建築物の構造規制などが加わる。県内で指定済みの警戒区域は1万456カ所。特別警戒区域の指定作業はまだ終わっておらず、現在は3446カ所。
崩落「4年前にも」 三浦市内の男性
「家がぐらっと揺れた。雨が降っていたので、崩れたとすぐに気付いた」
三浦市内の農家の男性(51)は、肝を冷やした被災の瞬間を振り返る。7月18日早朝、隣接する急傾斜地の土砂が崩れ、敷地内に落ちてきた。外に出て確認すると、土砂や樹木が作業小屋などに流入し、住まいも巻き込まれる寸前だった。
「斜面の崩落は4年前にもあった。雨が降り続いた今回も心配していたが、自分ではどうしようもない」と男性は表情を曇らせ、崩落のリスクと隣り合わせの現状に不安を口にした。「台風は1日で過ぎ去るが、梅雨は長い。来年も同じような被害が出ないだろうか」