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夜行列車は時代遅れか 寝台特急「あけぼの」来春廃止へ

社会 | 神奈川新聞 | 2013年12月11日(水) 12:58

雪の大館駅を後にする上野行き「あけぼの」=秋田県大館市
雪の大館駅を後にする上野行き「あけぼの」=秋田県大館市

上野-青森間に毎日運行されているJR東日本の寝台特急「あけぼの」が、利用者の減少や車両の老朽化などを理由に、来春のダイヤ改正で廃止される見通しという。夜行列車は本当に時代遅れなのだろうか。「切実な足」として利用している乗客の話に耳を傾けながら、公共交通の多様な役割について考える。

■横になって行ける

晩秋の平日午後9時すぎ、羽後本荘駅(秋田県由利本荘市)の待合室に旅行かばんを手にした客が一人、また一人と現れた。同10時1分発の上野行き「あけぼの」に乗る人たちだ。

「乗り換えなしで行けるし、横になれるから楽なんです」。友人2人と箱根の紅葉を見に行くという年配の女性は話した。帰りも「あけぼの」を予約してある。「廃止されたらとても不便になる。どうしよう」

同市は人口8万1千人の主要都市。だが、秋田新幹線の始発・秋田駅まで在来線で35分ほどかかり、そこからの同新幹線は東京まで約4時間。新潟経由でも行けるが、在来線と上越新幹線で計5時間半を要する。

「あけぼの」は、同市のほか県北部の大館市(人口約7万6千人)、能代市(同5万6千人)、山形県の酒田市(同10万7千人)、鶴岡市(同13万2千人)など、東京へのアクセスがあまり良くない地域を結ぶ。200席余りの寝台は週末になると満席になることもあり、平日でも駅に止まるたび、数人~十数人の客をこまめに拾う。JR東日本は「平均乗車率は公表していない」とするが、4~6割とみられている。

■郷愁だけではない

上野発の夜行列車おりた時から…と「津軽海峡・冬景色」に歌われたように、夜行列車には郷愁が伴う。近年、廃止が相次ぐたびに「時代の流れ」と報道された。だが、感傷の次元で片付けるわけにはいかない。

「夜行列車を利用してもらおうという積極的な姿勢が、JRからは感じられない」。運輸評論家の堀内重人さんは指摘する。

「あけぼの」はネット予約や自動券売機に対応しておらず、鷹ノ巣や八郎潟、象潟などの駅では発券窓口も廃止され「停車駅なのに切符が買えない」状況が常態化している。JR東日本が年末まで開催している観光宣伝の大型企画「秋田デスティネーションキャンペーン」のパンフレットに、「あけぼの」の文字はない。

確かに「あけぼの」の定員は、新幹線ならば2~3両に収まるほどの数だ。だが、堀内さんは「夜行列車のニーズは新幹線で代替しきれない」と話す。「座りっぱなしだと疲れる人、乗り換えを避けたい人は一定数いるのだから、車両を更新して続けるべきだ」

■公共交通の使命は

従来の夜行列車が衰退する一方で、今年10月、JR九州に超豪華寝台列車「ななつ星in九州」が登場した。追随するようにJR東日本、西日本もクルーズ列車の新造を決めた。

堀内さんは、鉄道サービスが豪華列車や新幹線と、各駅停車のローカル列車とに「二極化」することを懸念する。「選択肢が多い方が『豊か』なはずだが…」

国内外の鉄道に詳しい大磯町在住のフォトライター・杉崎行恭さんも、鉄道が本来持つ「乗り方」の多様性を重視する。例えば、オーストラリアを3泊4日で横断する豪華列車「インディアン・パシフィック」には個室やラウンジがある一方で、安い学割の席も用意されているという。

杉崎さんはまた、必要に迫られて夜間に移動する人の存在にも思いを巡らせる。「夜行列車のおかげで親族の死に目に会えた人もいるだろう」。かつて東海道線の寝台特急に乗務した元車掌は「『娘が嫁ぎ先で倒れたんです』と乗車してきた老夫婦のことが忘れられない」と振り返る。

鉄道の使命とは、新幹線のような大動脈に特化することだけだったろうか。

紀行作家の故・宮脇俊三さんは、国鉄時代の1980年代、和歌山県南部と大阪・天王寺とを結んだ夜行列車に乗り、こう記した。「朝早く大阪に着こうとすれば昼間の特急では間に合わないし、宿泊費を節約したい客もいる。国有鉄道としては、その客を無視するわけにはいかない」

◇代替の交通機関不十分

車両の老朽化を理由に夜行列車が廃止されたものの、代替の交通機関が十分でないルートもある。大阪-青森間の「日本海」と、大阪-新潟間の「きたぐに」(いずれも2012年廃止)だ。関西と北陸、東北地方を結ぶ数少ない交通機関で、特に「日本海」は、青森や秋田から京都方面に向かう修学旅行の高校生にも長年利用された。

秋田県北部の大館能代空港と大阪とを結んだ空路は11年に廃止。直通するバスもない。大阪-青森間を鉄道で移動する場合、東海道、東北新幹線を乗り継ぎ、6時間半ほどかかる。JRは両列車を廃止する際に「混雑期は臨時列車として運行する」としていたが、1年もたたないうちに臨時運行は途絶えた。

堀内さんは「鉄道はバスに比べて環境にも優しい。高級な個室から低価格の座席まで多様な設備があれば、潜在的な観光需要も喚起できる」と強調する。

杉崎さんは、夜行バスに比べて夜行列車の運賃が割高である点について、「線路を自前で保守しなければならない鉄道と、道路の維持費用が税金で賄われるバスとでは、競争環境が不公平すぎる」と指摘する。

◆寝台特急「あけぼの」 上野-青森間を毎日1往復している。「ブルートレイン」の一つで1970年に運行開始。下りは上野午後9時16分発、青森午前9時52分着。上りは青森午後6時23分発、上野午前6時58分着。上野-羽後本荘間の費用はB寝台個室で1万7640円、寝具の付かない寝台「ゴロンとシート」で1万1850円。東京-羽後本荘間を在来線と秋田新幹線で移動すると1万7120円、夜行バスは9170円。廃止について、JRはまだ正式発表していない。県内を発着する夜行列車は現在、東京-高松・出雲市間(横浜に停車)の「サンライズ瀬戸・出雲」だけ。

【神奈川新聞】


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