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特定秘密保護法案を問う(15):審議は尽くされたか、県内選出議員の攻防1カ月

社会 | 神奈川新聞 | 2013年12月8日(日) 11:34

機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法が6日深夜の参院本会議で可決され、成立した。与野党の県内選出議員は法案にどう向き合ったのか。11月7日の衆院本会議の審議入りから1カ月、国会での攻防をその動向から振り返る。

■対案

11月14日午前、衆院国家安全保障特別委員会。自民党の星野剛士氏(衆院12区)は政府側に「(特定秘密は)指定期間が終われば事実上、原則公開だと周知してほしい」と求めた。終了後、元新聞記者でもある星野氏は言った。

「『原則公開』に説明の軸足を置けばいい。バランスの問題だ」

秘密の範囲が恣意(しい)的に際限なく広がるのでは、との指摘が強まっていた。

政府案は公明党などの提案を受け、「知る権利」に配慮するなどの規定を盛り込んだ修正がなされた。だが、民主党は法案の骨格自体に賛同できないとして、政調筆頭副会長の後藤祐一氏(比例南関東)らで対案づくりを開始。関連法案を取りまとめて19日に与党に示し、協議に入った。

だが、自民、公明は日本維新の会、みんなの党と法案修正に向けた協議を進めており、県内与党議員は民主の対応を「引き延ばしにしか見えなかった」。民主執行部は「委員会審議で問題点が浮かぶのは当たり前」と強調したものの、最後まで出遅れ感は払拭(ふっしょく)できなかった。

■騒然

26日午前の衆院特別委。自公に維新、みんなを加えた修正案の採決に踏み切る。

野党の抗議で騒然とする中、法案は可決。特別委理事で公明党政調会長代理の上田勇氏(衆院6区)は採決後、強調した。

「修正協議は丁寧にやった。議論が不十分とは思わない」

夜の本会議。採決に先立つ賛成討論で、自民の岩屋毅元外務副大臣が「大いに聞くべきところがあった」と、民主との協議も4党案に加味されたことをにじませた。民主・後藤氏は無念がる。

「守るべき秘密があるとの方向性は与党と同じだった。あと数日あれば合意できただろう」

修正では自公と合意していた維新は、採決には反対して退席した。

「なぜ、一日二日の審議をケチるのか。画竜点睛を欠く国会運営だ」

中田宏国対委員長代理はそう反発した。

賛成の党方針で臨んだみんなの党。だが、前幹事長の江田憲司氏(8区)は、後方に座る浅尾慶一郎党幹事長(4区)に「強行採決に抗議する」とのメモを渡し、退席。

「秘密保護法制自体は必要と思うが、官僚支配が助長される懸念が拭えない」

江田氏は議場の外で執行部批判を強めた。

■混乱

衆院通過後も各種の世論調査で法案への反対意見は増えていく。「報道が一方的だ」。県内の与党議員はいら立ちを隠さなかった。

28日に実質審議入りした参院特別委員会でも、紛糾は繰り返された。秘密指定の妥当性を監視する新たな第三者機関の設置を政府が相次いで提案し、野党側が当惑したためだ。

社民党副党首の福島瑞穂氏(比例)は12月5日午後の特別委で「やるんだったら国会に法案を出してほしい」と政府に迫った。自民議員の質問の最中に、別の自民議員からの動議で審議が打ち切られる。野党議員の猛抗議が響き、中川雅治委員長の声が聞き取れないほどの委員会室で、法案は強行採決された。

「民主主義、知る権利を踏みにじるやり方だ」

福島氏は法案の問題点になぞらえて声を荒らげた。

■成立

6日深夜、参院本会議。衆院で賛成したみんなの党も、審議が強引として採決前に議場から退席。衆参で対応が割れた形となった。

「参院は衆院のカーボンコピーではない。法案には賛成でも議事運営に納得できない。党の対応にぶれはない」

政調会長代理の中西健治氏(参院神奈川選挙区)は、ぶぜんとした表情を見せた。

特別委委員で民主の牧山弘恵氏(同)は「法案に反対するファクスが事務所に山のように届いている」と明かし、政調副会長の金子洋一氏(同)も語気を強めた。

「機密保持の必要性に異論はない。だが、民主主義的手続きからは完全にアウト。立憲政治の崩壊だ」

ただ、参院民主党は抗議の意思を示すため採決直前にいったん退席した後、再び議場に戻るなど、混乱ぶりも見せつけた。

自民の小泉昭男氏(同)は採決後、強まる世論の反発を踏まえ言った。

「国民の懸念にはさまざまな機会で説明しなければならない」

公明・浜田昌良氏(比例)も語った。

「施行までに内閣審議などを経て1年ある。第三者機関も含め、懸念されている内容の運用には万全を期す」

そして続けた。

「法案についての報道がステレオタイプ。マスコミは情報流出の危険性を含め、報道の在り方を見直してほしい」

◆底流に耳傾けよ:記者の視点・大槻利久(報道部)

6日深夜に成立した特定秘密保護法。国民の「知る権利」をはじめ基本的人権が脅かされるとの危惧から、国民世論や野党が慎重審議を求める中、与党は「強行採決」で押し切った。

衆参両院で多数を占める自民、公明の与党による議事運営は一貫して会期末を想定したスケジュールありきのものだった。被災地・福島での地方公聴会で陳述人全員が法案に反対意見を述べたにもかかわらず、その翌日に衆院で強行採決したさまは、まさに象徴的だった。与党にとって「強行採決」は、既定路線だったのではないか、とすら思う。

国会の外では、廃案を求める声が連日、響いていた。市民活動であるデモとテロを同一視した自民党の石破茂幹事長の発言への抗議は胸を突いた。「われわれはテロリストか。違う、主権者だ」と。民意の代表が集う国権の最高機関で繰り広げられる議論との落差に愕然(がくぜん)とした。

脱原発への政策転換を政権に促す小泉純一郎元首相は講演で、脱原発を「夢のある事業」と言った。一方で、首相経験を踏まえ「世論に抗してやらないといけないこともある」とも指摘した。

政権が世論に抗して成し遂げた特定秘密保護法の制定が「夢のある事業」でないことは確かだ。小泉氏の発言はこう続く。「しかし、大きな底流となっている根強い世論をどう読むかも大事だ」

経済政策で成果を出し、県内議員が重要閣僚を務める現政権に私は期待している。世論に抗してやるべきことがあるとも思う。だが、そうであっても底流の声に耳を傾ける姿勢を今回のように欠けば、やがて「蟻(あり)の一穴」は大きくなり、政権そのものを押し流すだろう。率直に、そう思う。

【神奈川新聞】

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