
(女性、82歳)
祖父、祖母、妹と八王子に疎開していて、空襲に遭いました。
赤く光る東京方面を見ていたのもつかの間、「ザー」という音とともに落ちてきた焼夷弾に見舞われ、庭先の防空壕に妹と入りました。熱さと煙が押し寄せ、どうなるのかと思っていた時、祖父が金だらいをたたき、「出るんだ!」と叫びました。
朝、明るくなると、家は跡形もありません。炊くはずだったお米が、お釜で黒こげになっていました。他に食べるものはありません。
近所の農家の土蔵に保管されたジャガイモが、蒸し焼き状態になっているのが見つかって、分けてもらえました。焦げ臭かったけれど、食べました。
焼け跡でご飯を炊いている人がいて、見ているとおにぎりを一つくれました。すぐ食べていいのか、祖母の所へ持って行くべきか。迷いましたが祖母に手渡しました。祖母はそのおにぎりを鍋に入れ、水を加えて煮て、胃が悪かった祖父に食べさせてしまいました。
今も、おにぎりを見ると思い出します。ジャガイモは大好きです。