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やまゆり園事件4年
森炎さんと考える死刑(3) 例外的発動に正当性

社会 | 神奈川新聞 | 2020年7月26日(日) 09:20

 日本の死刑判決の件数は、存置国のなかで圧倒的に少ない。森炎さんは、その「例外的死刑制度」ゆえに、死刑に肯定的意味を見いだせるという。

 ──死刑を存置する各国の特徴を教えてください。

 「日本では、裁判員制度実施以降、第一審の死刑判決数は、年間平均4件で推移しており、これに対して、他殺による死者は、年間約300人となっています。殺人既遂に対する割合では、死刑になるのは1~2%です」


死刑判決が言い渡された裁判員裁判
死刑判決が言い渡された裁判員裁判

 「他の主な死刑存置国は、米国、中国、インド、シンガポール、台湾、アラブ諸国、北朝鮮、ベトナムになりますが、年間死刑判決数は、中国が数千件と突出しており、次にイランが百~数百件で、米国やエジプトは数十件とみられています。北朝鮮などは、概況不明ですね」

 「他の死刑存置国では、悪質な犯罪に対しては殺人でなくとも死刑を適用すべきだとの見解は現在でも根強く、オバマ前米大統領でさえ、公式にそう表明しています(※1)。けれども、これまでお話ししてきたように、これは深い根拠を欠いています」

 ──死刑は殺人罪に対してのみ適用するべき、ということですか。

 「殺人であっても、死刑を一般的に適用するわけにはいきません。カントは、『人を殺した者は死ななければならない』として、『殺人には死刑』を強く主張しましたが、現実には、ヒューマニズムの見地から種々の考慮すべき事柄が出てきて、どうやっても、それでは済まなくなります。具体的に言うと、まず、家族無理心中を企てて生き残った者に死刑を適用したらどうなるかという問題があります。法の名の下に事後的に無理心中を完遂することになってしまいます。男女無理心中も同じです。さらには、育児ノイローゼの母親による嬰(えい)児殺、家庭内暴力に耐えかねての殺人、親の介護に疲れ果てた末の殺人、わが子の深刻な障害を苦にしての殺人などでも、似たような自己矛盾の問題が含まれています」

 「これらは、斟酌(しんしゃく)される事情のある殺人で、いわば殺人の下限に位置するグループになるかもしれませんが、殺人に対する死刑であっても、肯定的意味が全く認められないばかりか、破滅的結末になる領域が確かにあるということです。また、洋の東西を問わず、殺人事件の圧倒的多数が、家族・親族間、親密知人間で起きているという実態があります。そして、それは、愛と暴力は深いところでつながっていると言われるような人間存在の複雑さに由来するとみられます。さらには、共生社会の理念もあります。これらから目指すべき社会を考えた場合、たとえ殺人犯であっても、共生を一律に否定すべきではないでしょう」

 ──日本の例外的死刑制度においては、死刑にどんな肯定的意味を見いだせるのでしょうか。

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