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まちづくりを問う 横浜・北仲通地区再開発(上)、揺らぐ正当性の担保、都市計画変更に疑問符

社会 | 神奈川新聞 | 2013年9月21日(土) 11:54

かつて複数の倉庫が並んでいた帝蚕倉庫=横浜市中区、2007年8月撮影
かつて複数の倉庫が並んでいた帝蚕倉庫=横浜市中区、2007年8月撮影

横浜・みなとみらい21(MM21)地区と関内地区の中間に位置する北仲通地区(横浜市中区)の再開発計画が揺れている。北仲通北地区では、歴史的建造物「帝蚕倉庫」を保存し、高層ビルにホテルを誘致するといった当初計画を、倉庫を取り壊し、ビルの住宅部分を増やす計画に変更。しかし、これらは市会の議論に反映されず、隣接する北仲通南地区では当初計画を前提とした市庁舎移転計画が進む。正当な手続きはなされているのか。専門家から疑問視する声が上がる。

■帝蚕倉庫の行方は

かつて4棟あり、現在は1棟が残る帝蚕倉庫は、関東大震災の復興事業の一環として大正期に建てられた歴史的建造物だ。

北地区の再開発事業者である森ビルなどは当初、この1棟を曳屋(ひきや)方式で移動した上で解体せずに保存すると表明。しかし計画変更に当たり、取り壊した上で復元する考えを打ち出した。「東日本大震災の影響で鉄筋コンクリート造りの構造に不備が見つかり、安全性に懸念がある」としている。

生糸の歴史に詳しいシルク博物館専門員の小泉勝夫さんは「昭和の初めから終わりまで、日本の生糸の大半はここで扱われて輸出された。生糸貿易があったからこそ横浜は大きく発展した。帝蚕倉庫は歴史を語る財産。将来のために残してほしい」と訴える。

まちづくり行政に詳しい横浜市立大学教授の鈴木伸治さんは、「文化財保護の考え方からすると、曳屋をして保存する方針は高く評価された。復元に変えたことによって歴史的価値が落ちる」とする。「復元するとして、どこまでの精巧さを求めるのか。その精巧さを曳屋と同等の価値があると誰が判断するのか」。議論が深まっていないことに不安を覚えている。

■なぜ非公開なのか

市は2005年、「まちづくりガイドライン」を策定。北仲通地区を「横浜を代表する歴史的景観を有する地区」と位置付けた。

地区内は建物の高さを150メートルに制限しているが、歴史的建造物の保全など地域貢献やまちの魅力づくりの度合いに応じて特例として200メートルまで認める。市は帝蚕倉庫を歴史的建造物として保存活用するよう事業者側に提示。それを条件に高さ200メートルの超高層ビルが認められた経緯がある。

ところが、森ビルなどが計画変更した後の今年3月、市はガイドラインを改定。曳屋から復元に方針転換しても、建築条件を緩和できる項目を加えたことで、ビルの高さは200メートルを維持することになった。

市は、「当初計画されていた曳屋保存が難しいとの判断が事業者からなされたため改定することにした」と、事業者の計画に沿った対応だったことを認める。

改定に当たって外部委員が参加したものの非公開。意見公募などもなく、会合は1回だった。

当初のガイドラインで帝蚕倉庫の保存方針を決めた委員会には市と事業者、学識経験者が参加。その一人、横浜国立大学名誉教授の吉田鋼市さんは「検討の末に曳屋をすると結論付けたはずだった。しかし、今回の外部委員には前回の話し合いに関わった人は一切関与せず、取り壊して復元という結論が出された。非常に残念」と嘆く。

鈴木さんは「貢献に応じた規制緩和が妥当であるとの議論は十分だったか」と指摘。非公開での改定についても「関係者しか知らないところで意思決定されたものが、実質的な都市計画の変更に当たるということは、都市計画決定そのものの正当性を揺るがしかねない」と訴える。

■市庁舎移転との関連

北仲通地区は12年1月、国の「特定都市再生緊急整備地域」に指定され、事業者が都市計画変更を提案することが可能に。事業者の提案から6カ月以内に都市計画決定することが法律で定められている。

市は「6カ月以内という期間はとても短く、提案内容をほとんど変更できない」と市の関与が限定的になることを認める。であればなおさら、その前段となるガイドライン改定に際しての議論を丁寧にすべきではなかったのか。

また、南地区への新市庁舎移転計画を協議する市会に、隣接する北地区の計画変更について十分な情報がもたらされなかった可能性がある。

市が市庁舎移転の整備方針を決定したのが12年11月。北地区にホテルが入居する当初の前提のまま、市会での議論が進む。鈴木さんが「市庁舎計画の検討過程に、北地区の計画変更の情報は提供されたのか」と疑問を呈する理由だ。

新庁舎は上階をオフィスとして民間企業に貸し出し、その賃料収入で建築費用を賄う計画を示す。鈴木さんは「事業者はホテルをやめてオフィスでなく住宅を増やす方針に変更した。つまり、計画地は商業・業務用向けより住宅向けに適していると判断したということ。すぐ隣の南地区で、オフィスの賃料で新庁舎の建築費用を賄う計画が成り立つものなのか」と疑問視する。

北地区では商業地に向かないとする森ビルなどの計画を認める一方で、南地区では商業地として成り立つことを前提とした計画を進める。市の姿勢は大いに矛盾するのではないか-。

鈴木さんはこう指摘する。「この北仲通地区をどのようなまちに育てたいのか。ビジョンを示し、説明責任を果たすことこそが、公共事業の正当性を担保する」

◆北仲通北地区の再開発計画 計画地区は約7.8ヘクタール。地権者の森ビルのほか、都市再生機構、大和地所などが2000年に再開発協議会を発足させた。メーンとなる超高層ビルは地下3階、地上50階建てで、総床面積約16万平方メートル。集合住宅やホテル、オフィス、商業施設などの用途を想定したが、その後、ホテル誘致を断念。約700戸だった住居数は約1200戸になる予定。

【神奈川新聞】

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