1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 食物アレルギーはいま(上)学校、再発防止へ情報共有

食物アレルギーはいま(上)学校、再発防止へ情報共有

社会 | 神奈川新聞 | 2013年9月16日(月) 12:05

児童が強いアレルギー症状を発症したという想定で行われた模擬訓練=相模原市立大野小学校
児童が強いアレルギー症状を発症したという想定で行われた模擬訓練=相模原市立大野小学校

昨年12月、東京都調布市で食物アレルギーを持つ小学5年生の女児が学校給食を食べて死亡した事故を機に、県内でも食物アレルギーへの関心が高まっている。再発防止に向けた取り組みを、学校や医療の現場から報告する。

養護教諭が叫んだ。

「エピペンを打つので手伝ってください!」

駆け寄った教員3人が横たわった児童の体を押さえ、注射器を太ももに突き立てた-。

夏休み中の8月27日、相模原市南区の市立大野小学校体育館で行われた、食物アレルギーの対処法を学ぶ訓練の一コマだ。

エピペンとは、食物アレルギーによる重い全身症状、アナフィラキシーを和らげる自己注射薬。同校にはエピペンを所持している児童を含め、食物アレルギーへの対応が必要な児童が約30人いる。

調布での死亡事故を受け、山重ふみ子校長は食物アレルギーによる容体の変化の速さに驚いた。「こんなにも簡単に亡くなってしまうなんて」

事故の検証結果報告書には、こう記されている。

〈今回の事故は、女の子が担任に気分が悪いと訴えてからの14分間における対応が、生死の分かれ目になっている〉

調布市の小学校も対策を怠ってきたわけではなかった。女児にはアレルギーの原因食材を使わない「除去食」を用意していた。だが、お代わりの際、誤食は起きた。

大野小学校では誤配食と誤食を防ぐため、除去食にラップをかぶせて区別し、混入にも注意を払ってきた。調布の事故後は、献立のうち除去食が一目で分かるよう、黒板の脇に毎日張り出すことにした。担任が不在だった場合を想定したものだ。

現場の教員からは「給食の時間は、恐怖です」との声も漏れる。

■研修会に教員殺到

8月2日、NPO法人アレルギーを考える母の会(横浜市旭区)と県による研修会。会場の藤沢市民会館は840人もの教職員で埋まった。

エピペンの練習キットが全員に手渡され、それぞれが太ももに繰り返し押し当てる。教員には認められているとはいえ、注射にはためらいがつきまとう。“予行演習”によって抵抗感を薄めるのが狙いだ。

研修会で多くの時間を割いたのが、エピペンを打つタイミングの解説だ。

ガイドラインでは「犬の遠ぼえのようなせきをしているとき」などが例示されているものの、やはり医師でなければ判断がつきにくい。壇上の昭和大学医学部講師、今井孝成医師は覚悟を促すように言った。

「迷ったら打つ、が原則。打つタイミングは医師でも迷うものだ」

研修会は本年度6回実施され、参加者は過去最多の約2800人。受講希望は後を絶たず、来年1月の追加開催が決まった。参加者アンケートで「やはりタイミングが分からない。もう一度参加したい」との声が多く寄せられたためという。

■高まる現場の不安

母の会にも、不安を抱く学校関係者らから相談が殺到している。園部まり子代表理事は「学校が真剣に向き合い始めた。研修などを通して、食物アレルギーの正しい理解が広がってほしい」と話す。

だが、知るほどに対応の厳しさを痛感する学校関係者は少なくない。

子どものアレルギー情報を校内で共有できているか。エピペンがどこにしまわれているか把握しているか。症状を見極め、エピペンを打ち、119番通報と保護者への連絡をし、症状を記録する、その役割分担は-。

藤沢での研修に秦野市から参加した私立保育園の女性看護師(33)は「看護師1人ではとても対応しきれない。マニュアルを作り、職員全員が対応できるよう研修を重ねたい」と表情を硬くした。

食物アレルギーの診療・研究の第一人者である、国立病院機構相模原病院の海老澤元宏医師は、対策が緒に就いたばかりである点を強調し、続ける。「アナフィラキシーの対応に注目が集まっているが、求められるのは心臓が動き、呼吸をしている状態で患者を救急病院に搬送すること。学校だけでなく、行政や消防、医療機関も含めた地域全体の連携が必要だ」

<調布市の小学5年生女児の死亡事故>

東京都調布市の市立小学校で昨年12月、乳製品アレルギーのあった5年生の女子児童が給食でお代わりをした際、誤ってチーズ入りの韓国風お好み焼き(チヂミ)を食べて死亡した。

事故検証結果報告書は、(1)調理員は配食の際、チヂミが除去食にあたることを女児に明確に伝えていなかった(2)担任は女児がお代わりを希望した際、事前に作成されていた一覧で除去食を確認しなかった(一覧は職員室の机の中にしまわれていた)(3)養護教諭は給食後に症状が出たにもかかわらず、アナフィラキシーを疑わず、エピペンの投与が遅れた-など、学校側の対応の問題点を指摘している。

担任は当初、エピペンを打つべきか尋ねたが、女児は「打たないで」と拒否したという。原因食材を口にした自覚がなかったため、持病のぜんそくの発作と思い込んだ可能性がある。

◇県内自治体でも進むマニュアル改定

調布市の事故を受け、県内自治体でも食物アレルギーの対応マニュアルの見直しなどが進む。

横浜市教育委員会の調査では、医師から食物アレルギーと診断されている市立小学校の児童は昨年6月末時点で5264人、全体の2・8%に当たる。ここ5年ほどは5千人前後で推移しているが、「給食の除去食対応希望やエピペン携帯者は増えており、求められる対策は多くなっている」(同市教委)。

2011年策定の市立学校向けのマニュアルに加え、本年度中に保育所向けにも作成し、無認可園も含めて市内全保育所に配布し、研修も行う。

相模原市教育委員会は5月に市立小中学校食物アレルギー対応検討委員会を設置し、小中学校向けマニュアルの改定に着手。校外学習や調理実習も含めて検討し、緊急時に対応できる内容に見直す。

模擬訓練も初めて実施し、市内に109あるすべての小中学校でも訓練を実施する予定だ。

大和市は3月に学校給食の手引を作成。市医師会や市立病院の専門医らの協力を得て、独自の調査表や、緊急時のチェックシートも作成している。

【神奈川新聞】

ぜんそくに関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング