大井町の東名高速道路で昨年6月、「あおり運転」を受けて停止させられたワゴン車に後続車が追突し静岡市の一家4人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた無職の男(26)の裁判員裁判は14日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)で判決が言い渡される。懲役23年を求刑した検察側に対し、弁護側は同罪の適用は認められないとして起訴内容を否認。予備的訴因の監禁致死傷罪の成立も含めて双方の主張は真っ向から対立しており、法解釈を巡る難しい判断に注目が集まる。
同法では危険運転の類型の一つとして、「人や車に著しく接近し、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する行為」と規定。条文上は走行中の運転行為が適用の前提とされ、停車後に起こった事故にまで適用が可能かが、今回の裁判で争われている。
検察側は、被告が約700メートルにわたって計4回一家の車に幅寄せや割り込み後の急減速を繰り返した行為が危険運転に該当すると指摘。「一家の車を止めて謝罪させようとした被告の意志は一貫している。実際に停止させたことで追突事故が誘発されたと評価でき、因果関係は明らかだ」としている。
一方で弁護側は「被告のあおり運転は停車後に発生した事故の結果と直接結びついていない」と反論。被告が走行していない時点で発生した事故にまで危険運転致死傷罪を適用することは、法律の拡大解釈で許されないとしている。
監禁致死傷罪を巡っても、検察側が「被告が一家を現場にとどまらせ、脱出困難な状態にした」と主張したのに対し、弁護側は「被告に監禁の故意があったかどうか疑問。一家の脱出が著しく困難だったとも言えない」と訴えている。
公判では、交通トラブルの末に被告が山口県内で起こしたとされる強要未遂罪の2事件と器物損害罪の事件も併せて審理。危険運転致死傷罪、監禁致死傷罪とも最高刑は懲役20年だが、検察側は山口の3事件を含めて懲役23年を求刑した。
高速に停止、どう評価 監禁罪成否も焦点に
被告の裁判員裁判では、監禁致死傷罪の成否も重要な争点になっている。危険運転致死傷罪が認められない場合に備えて、検察側が予備的訴因として追加したものだが、弁護側は成立を否定。専門家は「とどまらせた場所が高速道路上だったことをどう評価するのかがポイントになる」と指摘する。