ときに大きな声を出すこともある入所者だったが、徐々に弱っていった。「ご飯を一口でも食べてもらうには、どうしようか」。グループホーム「クロスハート円行・藤沢」(藤沢市)の施設長、林燕さん(44)は、施設のスタッフと一緒に考え抜いた。
「ありがとう」。昨秋、食事を終えた入所者のお礼の言葉が、耳に残った。帰途に就いたが、気になって家でも落ち着かない。もう一度自宅を出て、駅から職場に連絡した。容体を尋ねると「(入所者が)危なくなった」。
走って戻り、病床に急いだ。枕元で「来ましたよ」と、声を掛けた。
呼吸が途切れたのは、その瞬間だったという。
待っててくれたんだね-。皆で見守りながら入所者をみとった体験を回想するたび、今も林さんは涙を止められない。
中国・遼寧省出身。神奈川大への留学を経て、グループホームを運営する社会福祉法人「伸こう福祉会」(横浜市南区)に入った。3年前に施設長に就任。日本人スタッフを統括する。
大学院では経済を専攻していた。介護の需要が高まる母国から、経済の知識を生かして施設経営への参画を打診されたこともある。「でも…