新型コロナウイルス感染拡大の余波が、地域医療の現場を直撃している。医療崩壊こそ免れたものの、院内感染の拡大や経営状況の悪化などがもたらす影響は深刻化。4千人を超える会員を束ねる横浜市医師会の水野恭一会長(69)がインタビューに応じ、医療機関の窮状と第2波に備えた検証の必要性を訴えた。
特集 新型コロナ、神奈川の感染状況
課題が山積み
市内では感染者数が減少し、医療機関は落ち着きつつある。ただ、海外では中国・北京の市場で感染が広がり、米国や中南米でも陽性患者が増えている。日本にいつ第2波、第3波が訪れてもおかしくない状況だ。
次の波に備えて今すぐ取り組むべきは「検証」だ。だが、それが一向に進まない。課題が山積みなのに、行政は目先の問題だけで手いっぱいの状態だ。
最大の懸案は市内の病院でクラスター(感染者集団)が発生したこと。これをどう防ぐか、対策が必要なのに手つかずの状況だ。「収まったからいい」のではなく、なぜ起こり、防ぐにはどうすべきか。早急な検証が必要だ。
県は対策チームを立ち上げ、市も設立予定だ。だが、果たしてどこまでできるのか。感染拡大の防御策は決まっている。それよりも、現場の医師や看護師がなぜ感染を防げなかったのか確かめなければならない。
例えば、病院間で情報を共有し、互いに失敗例を挙げていく。対応策はその上で立てる。そういった検証をしなければ再発する。
横浜では独自で各病院への振り分けを進めている。重症者を収容しきれずに命を助けることができなかったり、他の救急疾患を診ることができなくなったりする「医療崩壊」は幸いにして回避できているが、県が進める中等症患者を振り分ける施策「神奈川モデル」との整合性が取れない点は見直しが必要だ。
流行の第2波、第3波を前に医療機関同士がいかに連携するか。発熱外来や検査外来を開業医が担うなど、大規模病院と中小規模の医療機関の役割を明確に分担していく必要がある。市内では開業医が中心となって2~3区ごとに集約して進める機運が高まっているが、入院の保証など病院との連携も課題だ。
ここ数日で目立ち始めた家族内感染を防ぐためにも、その規模を確かめる必要がある。軽症者は宿泊施設での療養と自宅療養に分けられたが、本来なら自宅療養はあり得ない。
病院の倒産も
経済的な打撃もかなりのものだ。市内では個人で経営する医療機関でも政府の持続化給付金を申請しているケースが相次いでいる。