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横浜事件、遺族側が二審も敗訴 「裁判所は今も責任逃れ」

社会 | 神奈川新聞 | 2018年10月24日(水) 22:06

判決後の会見で悔しさをにじませる遺族ら
判決後の会見で悔しさをにじませる遺族ら

 戦時下最大の言論弾圧事件とされる「横浜事件」で1945年に有罪判決を受け、63年後に再審で免訴が確定した元被告2人の遺族が、計6900万円の国家賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、東京高裁であった。野山宏裁判長は、47年の国家賠償法施行前の違法行為で、国は賠償責任を負わないとの判断を一審東京地裁に続いて踏襲。請求を棄却した一審判決を支持し、遺族側の控訴を棄却した。遺族側は上告する方針を示した。

 訴訟で遺族側は、特高警察が元被告らに加えた拷問や、虚偽の自白に基づいて言い渡された有罪判決の違法性を主張。当時の訴訟記録が確定直後に廃棄されたため再審の開始が大幅に遅れた点についても、司法の責任を追及してきた。

 2016年6月の一審判決は、元被告らへの拷問や有罪判決、訴訟記録の廃棄を違法だったと認定しつつも、国賠法施行前の違法行為について国が賠償責任を負う根拠がないと判断。控訴審ではこうした考え方の妥当性が争われた。

 野山裁判長は判決理由で、拷問や有罪判決、訴訟記録廃棄の違法性については一審同様に認めた。一方で、国賠法施行前の事案には、施行前の法律制度が適用されると指摘。戦時中の大審院判決が国の賠償責任を否定していた点などを踏まえ、「(今回の)各行為で、国が賠償責任を負うことはない」と結論付けた。

 訴えていたのは、戦時中に治安維持法違反容疑で逮捕された元中央公論編集者の男性(1998年死去)と、元南満州鉄道調査部員の男性(91年死去)の遺族。2人の死去後は遺族が裁判闘争を引き継ぎ、最初の再審請求から20年近くが経過した2005年に再審開始が決定、08年に治安維持法の廃止を理由に有罪、無罪の判断をせずに裁判を打ち切る免訴判決が言い渡されている。

「裁判所は今も責任逃れ」


 事件のでっち上げに加担した当時の警察や裁判所の行為を違法と断じつつも、国家賠償法の施行前だった点を盾に、責任を回避する判決が再び示された。「裁判所は今も責任逃れを続けている」。過ちに正面から向き合うことに及び腰な司法の姿勢に、遺族側は怒りをあらわにした。

 遺族側弁護団によると、戦前の国の賠償責任を否定する法理は戦後補償裁判などで国が多用し、裁判所も一時期は認める傾向にあった。ただ近年は行政法の専門家から懐疑的な意見が噴出し、そうした法理を採用しない判例も徐々に増えてきたという。

 法理の確立を否定する遺族側は控訴審で、第一人者とも言える大学教授の証人尋問を2度にわたり請求。しかし東京高裁は申し立てをいずれも退け、最新の学識に直接法廷で耳を傾けることを拒んだ。

 こうした姿勢に、弁護団の河村健夫弁護士は「高裁が教授の話を虚心坦懐(たんかい)に聞くことがあれば、このような判決にはならなかった。改めて強い憤りを覚える」と語気を強めた。

 元被告の妻(69)も「裁判所はとにかく横浜事件の本質を分かろうとしない」と批判。「過去にいいかげんな判決を自ら下していても、やりたい放題で本当に失望した」と悔しさをにじませた。

 弁護団の森川文人弁護士は「この訴訟は、大きく言えば司法の責任を問うものだ」と強調。現代の治安維持法とも呼ばれるテロ等準備罪の成立を引き合いに「裁判所が今も責任逃れの姿勢を続けるなら、横浜事件と同じようなことが再び起こりかねない」と危惧した。
 

横浜事件 1942年から終戦にかけて雑誌編集者や新聞記者ら60人以上が、共産主義活動をしたとして県警察部特高課(当時)に治安維持法違反容疑で逮捕された言論弾圧事件。30人以上が起訴され、大半が戦後に有罪判決を受けた。名誉回復を求める元被告や遺族らは86年以降、4度にわたって再審を請求。2005年と08年に再審開始が決まり、免訴判決が08年と09年に確定した。遺族は刑事補償請求も行い、刑事補償金が支払われた。

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