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時代の正体〈643〉性的少数者と人権(中)「自分」明かさせぬ社会

社会 | 神奈川新聞 | 2018年10月24日(水) 11:00

やました・としまさ 弁護士、LGBT支援法律家ネットワークメンバー、東京都豊島区子どもの権利委員会委員。共著に「どうなってるんだろう? 子どもの法律」(高文研)、「子どもの人権をまもるために」(晶文社)ほか。1978年、高知県生まれ。
やました・としまさ 弁護士、LGBT支援法律家ネットワークメンバー、東京都豊島区子どもの権利委員会委員。共著に「どうなってるんだろう? 子どもの法律」(高文研)、「子どもの人権をまもるために」(晶文社)ほか。1978年、高知県生まれ。

【時代の正体取材班=田崎 基】「セクシュアル・マイノリティーと人権」をテーマにした講演が県内の自治体担当者ら向けに行われた。全体集会でマイクを握ったのは、LGBT支援法律家ネットワークのメンバーで子どもの人権にも詳しい山下敏雅弁護士。心と体の性が異なるトランスジェンダーを中心に、「自分自身」を明かすことを抑圧する社会を語った。今月11日の講演詳報の2回目。

    ◇

 心と体の性が異なるトランスジェンダーについての話をします。

 ある高校から相談がありました。体は男性だが、自分としては女性だという生徒が入学してくる。中学生のときはそれを隠して男性として通学してきた。高校進学を機会に、学区も離れていることから、入学当初から女子生徒として通学したい。学校としてはこれを受け入れたいと考えている。

 ただ、体育の着替えのときなどで他の女子生徒やその保護者との関係で体が男性だと気付かれたらトラブルになりかねない、本人も傷つく。学校側は全体集会などで「体は男だが女子生徒として通わせます」と説明会を開いてはどうかと提案してきました。

 だがその生徒と保護者は絶対に嫌だと言う。自分の体が男性だということを知られたくないと言っているという。

 私はこう答えました。

 「本人の意思を尊重してあげてください」

 自分の体がどうなっているか。それは極めて重要なプライバシーです。それを他人にいちいち説明しなければならないのは苦痛に他ならない。

 もし仮に気付かれて女子生徒たちやその保護者たちが騒いだときには、それこそ学校は教育機関として毅然(きぜん)と「この子は女の子です。他の女子生徒に対して性的な加害行為をしたり、迷惑をかけたりしません」ということを明確に説明し、その生徒を守ってあげてください、と伝えました。

 結局、特段の説明会を開くことなく、その生徒は女子生徒として通学を始めることができました。

意思の尊重


 そして1年半後。再び同じ高校から相談がありました。修学旅行を控えているという。

 修学旅行では生徒たちのテンションが高まっているし、体の接触があるかもしれない。寝相が悪くて寝間着がはだけてしまうかもれいない。修学旅行先という特殊な場所であることも含め、せめて寝るときは別室に、と学校側は考えたわけです。

 生徒と保護者は、一生に1度の大切な修学旅行だし、泊まるときだけ別室というのはむしろ不自然だということで、他の女子生徒と同室での就寝を求めていた。

 「必ずうまくやるから」と。

 私からの回答は入学時と同じでした。そうした危険性を分かった上で、本人が友人たちと一緒に泊まりたいということであればそれを尊重してもらいたい。

 もしそこでトラブルが起きた場合には、そのときこそ学校は毅然と説明してもらいたいと。

 結局、何のトラブルもなく修学旅行を終えることができ、その生徒は卒業することができました。

 トランスジェンダーの生徒といっても一人一人、何をしてほしいか、してほしくないかは異なります。重要なことは個々のケースに応じて本人の意向を尊重して対応してもらいたいということ。本人の意向を尊重することが大切であるということは、トランスジェンダーに限らず、全ての人にとって大切なことだということです。


セクシャルマイノリティーについて話す山下敏雅弁護士と講演に聞き入る参加者ら=11日午前、横浜市開港記念会館
セクシャルマイノリティーについて話す山下敏雅弁護士と講演に聞き入る参加者ら=11日午前、横浜市開港記念会館

役所の差別


 5年前、性同一性障害のため、性別を女性から男性に変えた男性が戸籍上の父親になることができるという決定を最高裁が下しました。

 155人で弁護団を組み、私が弁護団長として取り組んだ事案です。一審、二審はあっさり敗訴し、最高裁で逆転勝訴しました。

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