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精神障害者フットサルチーム「FC PORT」を率いた2000日
僕の監督奮闘記(1)「航海、いきなり暗礁」

社会 | 神奈川新聞 | 2018年10月11日(木) 13:25

試合に勝利して喜ぶ「FC PORT」のメンバー=2017年10月、愛媛県西条市(障害者スポーツライター&カメラマン・松本力さん提供)
試合に勝利して喜ぶ「FC PORT」のメンバー=2017年10月、愛媛県西条市(障害者スポーツライター&カメラマン・松本力さん提供)

 神奈川新聞の記者である僕が、精神障害のある人たちがプレーする「ソーシャルフットボール(フットサル)」チームの監督に就いて、5年が過ぎました。昨年は初めて全国大会に出場し、しかも準優勝することができました。国などで障害者雇用率の水増しが問題になっていますが、今年4月からは精神障害者も雇用義務の対象に加えられています。少し大げさですが僕の監督奮闘記が、彼らとどう向き合っていくかを考える一助になればと思います。(佐藤 将人)

 そのときの愛媛の空はどしゃぶりでしたが、僕の心は晴れ渡っていました。

 横浜を拠点に活動するわが「FC PORT(ぽると)」は、昨年10月に愛媛県であった全国障害者スポーツ大会「2017愛顔(えがお)つなぐえひめ大会」に出場しました。2回目となった精神障害者フットサルの全国大会が、全国障害者スポーツ大会のオープン競技として開催されたのです。

 僕らにとっては念願の夢舞台でした。全国大会の予選にあたる関東大会で過去の最高成績は4位。そんな「ぽると」にとって、関東大会で2位に入り、全国への切符を手に入れただけでも快挙でした。

 代表10チームによって争われる全国大会は、5チームに分かれた各予選リーグの1位が決勝に進みます。この競技発祥の地である大阪代表と、2大会連続出場の北海道代表と同じ組に入った僕らが決勝に進出することは、誰も予想していなかったと思います。

 1戦目に勝ち、後に2選手が日本代表に選ばれることになる強敵の北海道との試合は何とか1-1の引き分けに持ち込みました。大会2日目の大阪とのゲームは4-1でものにし、1試合を残して勝ち点で北海道と並びました。

 得失点差で僕らが上回っていましたが、互いに最終戦は力の差があるチームが相手。より多くの点を取って勝つ必要があります。

 先に試合に臨むのは僕ら。監督である僕は「他力じゃねえ。自力で決めにいってこい」と選手をたきつけました。結果は9-0。得失点でプラス21とし、北海道が最終戦を17点差で勝たない限り、僕らが1位となります。さすがにこれは決めたと思いました。

 しかし、北海道はあれよあれよと得点を重ね、残り3分ほどで14-0。もう僕は試合を見ていられませんでした。試合終了の笛が鳴り、会場に戻るとスコアはそのままになっていました。

 それはいろいろな困難を抱えながらも一つになった選手たちが、自力でたぐり寄せた決勝進出でした。その光景を誰よりも信じられない思いで見ていたのは、チームの創設者であり、代表の篠崎安志さんでした。

 ただ、ここに至るまで順風だったわけではありません。道のりは、まさに紆余曲折(うよきょくせつ)でした。まずは、世間的になじみの薄い精神障害者フットサルの活動について、説明したいと思います。


 「ぽると」が産声を上げたのは2008年です。神奈川で初めて精神障害者フットサルの大会が開催されたのが機でした。

 大会の開催も、チームの結成も、きっかけは当時横浜市神奈川区の高齢・障害支援課に勤めていた、大の川崎フロンターレファンである篠崎さんをはじめとした、サッカー好き有志の思いつきでした。

 その少し前に、大阪で初めて精神障害者フットサルが始まりました。競技を通じたコミュニケーションが当事者のリハビリに有効とされ、これまたサッカー好きの精神科医が治療に採り入れたのが出発点でした。

 僕が「ぽると」に出合ったのは、東日本大震災の取材などに奔走していた12年でした。同区の主催でサッカーを通じたリハビリをテーマとした体験イベントがあり「取材してもらえませんか」と言われ、「そんなのあるんだ」と足を向けただけでした。

 そこで僕が学生時代にフットサルのゴールキーパー「ゴレイロ」として、全国選手権に出ていたことなどを話すと、篠崎さんに「練習に来て一緒にやってください」と誘われました。すると当時の監督が転職と県外への転居が決まり、なし崩し的に僕が指揮を任されることになったのです。

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