
IR(カジノを含む統合型リゾート施設)を巡る議論ではカジノに賛成か、反対かという構図になりがちだ。まちづくりという観点からみた場合、果たして横浜にIRは必要なのか。仮に、横浜に造るならば、どんな視点を大切にすべきか。海外のIR事情に詳しい不動産総合戦略協会(東京)の村林正次理事長(66)は、カジノは不可欠な要素ではないとした上で「100年、200年先も評価される施設を目指すべき」と強調。世界中の英知を集め、設計図を描くよう訴える。
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カジノは世界中、どこでもできることになっているのだから、日本だけやらないのはおかしい。できるよう法整備するのは当たり前。ただ、法律ができただけの話であってカジノを造らなければいけない、というものではない。
どんなIRを造るかは都市によって違うはずであり、それはみんなで議論すれば良い。環境を整え、やりたい人がいて、(経済波及などの)効果がある所がやれば良い。日本には他のギャンブルも数多く存在するわけで、依存症の問題はそれらと併せて対策をとるべきだ。
資源を資産に
横浜市がIRを誘致するかの議論は、非常に深い話だ。横浜の将来像を本気で考えることを意味する。
横浜は大都市で、とりわけ都心臨海部は非常に魅力がある。ただ、これでいいと思っていては、せっかくの「資源」が「資産」にならない。
海外にアピールするにはどうすべきか。本当の横浜の良さとは何かを議論する絶好の機会であり、ぜひ議論すべきだ。
もし、横浜の経済界や市民がカジノが欲しいと言うなら、事業者に競争させて造れば良い。首都圏からそれなりに客は来ると思う。でも、本当にそれで良いのか。個人的には、もっと良い土地利用の仕方があると思っている。
例えばナショナルトレーニングセンターのようなものをつくり、スポーツの医学、専門家、企業などを集積し、世界に冠たるスポーツタウンとする案だ。
医療施設や宿泊施設、会議場なども設置。さまざまな国から人が訪れるので、その中にカジノを造ろうという考えは、あっても良いと思う。広い意味でのMICE(国際会議などの総称)に、カジノやスポーツ施設もあるとの考え方だ。カジノは一つの機能で、あっても良いというレベル。なければいけないものではない。
ただ、本当に、横浜にカジノが必要か。横浜の経済界の人たちが、どこまで本気なのか。横浜ならばカジノに頼らなくても、いろいろな議論ができそうな気はする。