「香、帰ってきて」-。1991年10月、横浜市立本宿小学校3年の野村香さん=当時(8)、同市旭区=が行方不明になってから27年が経った。5日には、香さんの両親と香さんが進学予定だった市立本宿中学校の生徒約20人が相鉄線二俣川駅と鶴ケ峰駅で情報提供を求めた。有力な手掛かりを得られぬ年月を重ねつつも、両親は「若い人たちが手を貸してくれるのが希望」。切なる願いはただ一つ、香さんとの再会だ。周囲の支えを励みに、いつか会えると愛娘(まなむすめ)の帰宅を待ち続ける。
「元気でいれば35歳。でも、私たちの中の香は小学3年生のまま。いま、どんな姿になっているのか想像もつきません」。母親(65)は行方不明当時の香さんの顔写真をじっと見詰めた。
「家は建て替えず当時の面影を残している。戻ってきた香が迷うことがないように」と父親(70)。母親も「いつ戻ってきてもいいように、家の中も当時のまま」と言い添える。
香さんは91年10月1日午後3時50分ごろ、自宅近くの書道教室に出掛けたまま行方が分からなくなった。この日は雨が降っていたことなどから捜査は難航。県警は特別捜査本部を設置し捜査を続けるが、解決につながる有力な情報は得られていない。
5日、二俣川駅前には両親や同校の生徒、旭署員らが集まり、情報提供を呼び掛けるチラシを配布した。同校1年の生徒(12)は「看板などで小学生のころから香さんを知っていた。お手伝いしたいと思っていた」と言い、別の生徒(12)は「チラシを見て、みんなが事件を忘れず思い出してほしい」。署長は「一刻も早く香さんを家族の元に帰せるよう全力で取り組む」と話した。
「何の情報もない。せっかく協力してもらっているのに歯がゆい」。父親は無念さをにじませながらも、「事件を風化させず長く伝えることで香のような子が出ないよう願っています」。母親は「みなさんのおかげであきらめず、帰ってくると信じ続けることができています」と言葉を重ねた。
情報提供は、旭署特捜本部電話045(361)0110。