【時代の正体取材班=田崎 基】第4次安倍改造内閣が2日本格始動した。その陣容を俯瞰(ふかん)すると、際立つ特徴を見いだすことができる。透けるのは「極右」の二文字。この国の最高権力者は自らに近似する人員で側近を固め、異論を挟ませない布陣を敷くことをまたしても厭(いと)わなかった。なりふり構わぬ姿勢がひたすらに目指すは悲願の「改憲」。
閣僚20ポスト中、15人が国内最大の右派団体「日本会議」の国会議員懇談会に所属する。その組織率は75%に上る。2012年12月の第2次安倍政権以降、こうした高水準が続いている。安倍内閣が「日本会議内閣」と言われるゆえんだ。
日本会議の現在の会員数は約4万人という。この3年間で5千人増えた。
皇室の敬愛や、新憲法の制定を目指し、国旗国歌法の制定や、教育基本法の改正に取り組んできた。「国を愛し、公共につくす精神の育成をめざし、広く青少年教育や社会教育運動に取り組む」としている。
こうした右派運動と足並みをそろえて政策展開してきたのが安倍政権の5年半余りであった。
第4次安倍改造内閣について「端的に言って、極右政権」と表するのは、日本会議の動向に詳しい「子どもと教科書全国ネット21」の事務局長、俵義文さんだ。
遺物
「教育勅語を現代風に解釈したりアレンジしたりして道徳(教科)で教えることは検討に値する」
就任直後の2日、記者会見でこう語ったのは文科相として初入閣した柴山昌彦氏であった。
教育勅語は戦後間もない1948年に衆参両院でその排除・失効決議がなされた。
教育の基本方針を示す明治天皇の勅語として1890年に発布された「教育ニ関スル勅語」。315文字の短い文章で、天皇への忠誠や愛国を国民道徳としている。
1930年代に入ると教育勅語は神聖化され、学校ではその写しが「御真影」(天皇・皇后の写真)と合わせて奉安殿という別の建物に保管された。児童、生徒は暗唱させられ、この内容は軍国主義の教えとして利用されていった。
教育勅語の本質はそうした「国民主権と、個人の尊厳の否定」を前提とする。書き込まれた道徳観は全て「以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」につながり、「天皇のため」「国家のため」に行き着く仕組みが内在している。
歴史的経緯や、その本質的狙いからすれば、現代風に解釈しアレンジしたとき、それはもはや「教育勅語」ではない。一方でそれをあえて「教育勅語」と名付けて学校教育の場に持ち込むのであれば、国民主権や基本的人権の尊重といった憲法の基本原理と真っ向から食い違い、是認し得ない。
必然
教育勅語について「道徳的にいいことも書いてある」といった言説は、しかし右派勢力によってことさら強調されてきた。そうした経緯を熟知した上で、教育行政を率いる文科相が就任直後に改めて口にしてみせた。
発言は批判を受けたが、俵さんは「むしろ必然。言うべくして言った」と鼻白む。
安倍政権が押し進め、2018年4月から本格的に全国の小学校で教科化された「道徳」。俵さんは、「これは教育勅語を具体化させるために戦前に行われた教科『修身』の復活という企てであり、日本会議の方針でもある」と指摘する。
安倍政権は、これに先立つ17年3月、教育勅語の利用について「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」とする答弁書を閣議決定している。
柴山氏の発言は、氏個人の考えという範疇(はんちゅう)を大きく超え、この国の教育や社会を七十余年以前へと引き戻そうとする最高権力者の思惑の代弁であった。
破壊
地方創生担当相に就き、唯一の女性閣僚として取り上げられた片山さつき氏もまた、その言動に注目が集まる。12年12月には憲法改正の考え方について、ツイッターにこう投稿している。