義務教育を十分に受けられなかった人が学ぶための公立夜間中学の設置に向けた動きが相模原市で広がっている。市民団体「相模原の夜間中学を考える会」が設立され、市教育委員会に対する要望活動などを開始した。横浜、川崎市内に続く県内3校目の設置機運を高めようと、15、16日には夜間中学を描いた映画の上映会を開催。県が昨年行ったアンケートでは、市内には入学希望者が最も多く、市教委も近く実態調査に乗り出す。
「事情があって、小学校に1年、中学校に1年ぐらいしか通えませんでした」
同会が16日、同市緑区で開いた映画上映会。夜間中学で学ぶ人を描いたドキュメンタリー映画「こんばんは」の上映後、市内に住む男性(66)がマイクを握って語り始めた。「私も夜間中学で学び直したい」と言葉に力を込めた。
2年前にカンボジアから来日し、同市緑区に住むソク・スライラプさん(19)もマイクを取った。昼は食品加工会社で働き、夜は週に2回、市内の国際交流ラウンジでボランティアから日本語を学んでいる。
カンボジアでは小中学校には通えなかったため、「夜間中学に毎日通って勉強がしたい。日本でケーキ職人になりたい」と目を輝かせていた。
県内に2校
県内の公立夜間中学は横浜市立蒔田中(南区)、川崎市立西中原中(中原区)の2校。5月1日時点で、両校に計46人が通学しているが、受け入れは地元市在住・在勤者に限られる。
戦後混乱期に義務教育を受けられなかった人や不登校だった人、外国籍の人たちの学びの場として公立夜間中学の設置を後押しする教育機会確保法が2016年12月に成立。県教委は17年5月、協議会をつくり、3校目の開校を目指し市町村教委に設置を促している。
県教委が17年度に横浜、川崎市を除く県内自治体で実施したアンケートでは、160人から入学希望の回答があった。相模原市内居住者が54人で最も多く、厚木市21人、座間市と愛川町の10人が続いた。
判断材料に
入学希望者が多かったことを受けて相模原市教委は18年度中に市民向けのアンケートを実施する予定。質問項目や実施方法などを検討しており、どのようなニーズがあるのかを詳しく調べる。結果を夜間中学設置の判断材料にするという。
こうした動きに合わせて、相模原の夜間中学を考える会は5月に設立された。勉強会を重ね、市教委に夜間中学の設置を要望してきた。元中学校教員の吉田恵一代表は「多くの人が夜間中学で学びたいと望んでいる。どんな人でも分かるまで学べる学校が市内にほしい」と話している。