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東京経済大・大久保奈弥准教授
時代の正体〈635〉開発に加担しない反骨 辺野古新基地建設

社会 | 神奈川新聞 | 2018年9月27日(木) 11:00

記者会見で発言する大久保奈弥さん=衆院議員会館
記者会見で発言する大久保奈弥さん=衆院議員会館

【時代の正体取材班=田崎 基】日ごとにコンクリートの護岸は延伸し、ついに外洋と遮断された。沖縄県名護市、辺野古沖で安倍政権が強行する米軍の新基地建設。サンゴの研究で知られる東京経済大の大久保奈弥准教授は、この美しい海が埋め立てられようとしていることに警鐘を鳴らす。科学者としての矜持(きょうじ)を胸に。

 反骨の生物学者は嘆き、悲しみ、憤っていた。

 9月7日に行われた「普天間・辺野古問題を考える会」が主催した記者会見。大久保さんは回ってきたマイクを手に短い時間で全てを伝えようと、いつもより早口でその不正義を解き明かそうとしていた。

 「約束違反をしているのは防衛省だということ。着工前にサンゴを移植するという約束をしている。それをおかしな日本語解釈に読み替えてサンゴを移す必要はないと結論付けた。2014年に防衛省沖縄防衛局が出した資料でも明確に工事前に全ての生き物を移すということが書かれていた。明らかな約束違反だ」

 国が、県との間で交わした約束事項を守らない。そればかりか、違反の指摘を受けても言い逃れの根拠をひねり出す。信じがたい強硬にしかし屈することはできない。

 「今回の辺野古大浦湾での新基地建設が明らかに自然環境の破壊だということをはっきりさせておきたい。いま国を挙げて進めているSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みにも反する」

 しかし言いたい眼目はそこではない。

 そもそも「移植」という手法にこそ欺瞞(ぎまん)があるのだ。

 「サンゴや生物の移植は環境保全措置にならないということ。生き物を移してもその多くは死んでしまう。これでは『環境保全』にならない。保全するのであれば、その場所を埋め立ててはいけないということです」

「移植」の不条理


 「海を守る研究を」とサンゴの移植に関する研究に取り組み始めたのは大学院に進学してからだった。


大久保奈弥さん
大久保奈弥さん

 サンゴなど生き物の骨が積み重なってさんご礁という地形をつくる。そこに多様な生き物がすみ、さんご礁生態系を構築する。

 「地上で言えば、原生林のようなもの」

 水質や水流、地形、そのほかさまざまな要素が複雑に絡み合い美しいさんご礁が形成される。

 国内で唯一、サンゴの移植に関する論文で博士号を取った。その自負ゆえ「移植の研究」から離れた。

 「私たちサンゴの研究者は『環境保全、環境保全』と繰り返す。そのためには移植が必要だと一部の研究者は言う。しかし、移植の研究は、進めれば、進めるほど『移植すれば、そこを開発できる』という話になる。もろ刃であることに気付き、移植の研究をやめた」

 「保全」を語りつつ移植技術を研究し成果のみを公表することはつまり、「開発」に免罪符を与えることと同義-。この不条理に直面した。

 同じことが辺野古新基地建設でも繰り返されようとしているのだった。しかも「移植するから」という詭弁(きべん)とともに、しかしその約束さえ反故(ほご)にする欺瞞をも纏(まと)い、埋め立てられようとしているのだった。

 看過できようもなかった。抗議声明への呼びかけ人として名を連ねることに躊躇(ちゅうちょ)はなかった。

巨額が投じられ


 しかも「移植」は多くのケースでその後、死に絶えることが判明している。

 大久保さんによると、沖縄県が公表しているサンゴ礁保全再生事業報告書では、ある海域で5年間に植え付けられた7・9万本のサンゴの9割が既に死亡した。


大久保奈弥さん
大久保奈弥さん

 さらにこの「移植」には毎年巨額が投じられている。

 
 

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