【時代の正体取材班=田崎 基】沖縄の基地問題を調査・研究してきた「新外交イニシアティブ」(ND)が沖縄県知事選(13日告示、30日投開票)に合わせ、「沖縄と米軍基地-県知事選で問われるべきは何か-」と題するシンポジウムを開催した。辺野古新基地問題を巡る今後の展開や解決策が見いだせない沖縄の現状、日米地位協定、米軍基地が地域にもたらす汚染などが語られた。マイクを握ったジャーナリストのジョン・ミッチェルさんは基地汚染のその隠蔽について語った。
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私はジャーナリストとして、米国の情報公開法を使い米軍の実態を明らかにする活動をしている。米中央情報局(CIA)が2012年に作ったハンドブックを、今年の初めごろ手に入れることができた。
それは、沖縄にある米軍の存在について情報操作をするか、という方法を示した手引書だった。
そこには非常に重要な内容が書かれていた。米軍の存在によって「経済効果がある」「文化交流につながる」「災害時には救援してくれる」という点を強調すべきである、ということや、一方で言うべきでないこととして、「沖縄に存在する肥大化した軍の存在」を挙げていた。
沖縄に駐留する米軍が「抑止になる」ということも口にすべきでないと記載していた。
これは、「抑止になると言及すれば、沖縄ではなく日本の本土に米軍基地を配置すべきではないか」という疑問が沖縄の住民からあがってくることになるからだ、と解説していた。
そして、基地の環境問題についても口にするな、と指摘していた。
軍事基地によって沖縄の土地、海、住民に対して環境上の影響が出ていることを言うべきでない、と。
米国政府はこの環境問題について極めて慎重な態度を取っている。軍事活動や作戦によって、沖縄は異常に有害な影響を受けている。そのことを米政府は知っている。だから、これに対する情報をできる限り秘匿し続ける必要があると考えている。私はこれまでの7年間、ジャーナリストとしてこの秘密のふたを開けるということを仕事としてきた。
地位協定の不条理
「基地」は汚染されている。この事実を多くの米国人が知っている。米国は、国内の基地汚染について調査し、その結果を公表し、誰でも見られるようにしているからだ。
米国内のどこに基地があり、どこがどの程度汚染されているのか。約4万カ所が汚染されていて、その周辺地域にも影響が出ている。このことは米国内では誰でも知っている周知の事実となっている。
しかし日本では違う。米軍基地は日本国内に78カ所あり、このうち31カ所が沖縄にある。しかしそこでの環境被害については我々は何も知ることができない。
この問題の根源にあるのが「日米地位協定」だ。
日米地位協定には、日本政府の関係者が在日米軍基地内に立ち入って調査できるという条文がない。さらに、米軍は基地を返還するにあたり汚染除去する必要がない。
ドイツや韓国などでは米軍基地内で環境法令違反があった場合、米軍がその責任を負わなければならないが、日本ではそうなっていない。そして、こうした日米地位協定が改定されることもない。
日本では米軍基地による公害について明らかにする手法は三つしかない。まずは基地が返還された後にその土地を調査する方法だ。これまで埼玉県朝霞市、東京都立川市、沖縄県内の各地で、米国から返還された土地が大規模に汚染されていたことが判明している。
二つ目は、米軍人や米国人の内部告発者から話しを聞く。三つ目が、米国の情報公開法を使うという方法だ。
隠蔽の構図
那覇市の隣、浦添市にある米軍基地キャンプ・キンザーでは、70年代にベトナム戦争で使い切れなかった大量の化学物質が持ち込まれ貯蔵されていた。殺虫剤、除草剤、溶剤などで、これが40年たったいまも漏れ出し周辺地域に広がっている。
キャンプ・キンザーは返還が計画されているが、おそらく相当汚染されているだろう。その除染の費用は日本の納税者が負担することになる。
米軍の射爆場となっていた鳥島(沖縄県久米島町)では、90年代の半ばに米海兵隊のジェット戦闘機が劣化ウランで汚染した。日米双方が除染をしようと調査に入ったところ、劣化ウラン188キログラムが投棄されていたことが分かった。劣化ウランは人体にとってとても危険で先天性の奇形の原因となったり、発がん性があったりすることが明らかになっている。
このほかにも基地公害として燃料や下水、汚染水、PCB(ポリ塩化ビフェニール)といった有害物質の流出は数え切れないほど起き、そのほとんどが知られることなく隠蔽(いんぺい)されている。
米国の情報公開法を使って海兵隊のハンドブックも手に入れたが、それによると、米軍人は政治的に問題となるような事故について、日本政府に知らせてはならないという命令が与えられていると書かれている。
不都合な事実
これらの基地公害は、沖縄の海兵隊に限ったことではなく、厚木や横須賀、岩国といった米軍基地施設の中でもこうした問題が起きている。例えば、