在日米海軍と海上自衛隊が共同使用する厚木基地(大和、綾瀬市)の航空機騒音の解消を目指し、周辺住民が国に飛行差し止めと損害賠償を求めた「厚木基地第4次爆音訴訟」の上告審弁論が31日、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)で開かれた。二審判決が命じた夜間早朝における自衛隊機の飛行差し止めの是非を巡り、住民側と国側の双方が意見陳述。住民側は「被害の実態を直視し、救済の道を」と訴え、結審した。判決は12月8日。
1976年から続く一連の訴訟が、最高裁で審理されるのは第1次以来2回目。最高裁弁論は判断を変える際に必要な手続きで、2015年7月の東京高裁判決が見直される可能性がある。
高裁判決は、16年末までと期間を区切った上で、午後10時から翌日午前6時までの自衛隊機の飛行差し止めを高裁段階で初めて認めた。最高裁は、この点に関する住民側と国側の上告の一部を受理し、弁論の開催を決定。高裁判断が維持されるか否かが今後の焦点で、軍用機の飛行差し止めが最高裁で認められれば初のケースとなる。
この日の弁論では、自衛隊機運航の公共性や、住民が受けている損害を巡り双方が意見を主張。住民側弁護団は「公共性の評価は人によって異なり、防衛上の公共性を過大視されれば、基地被害の司法救済は極めて困難になる」「騒音は人の生理機能に影響を及ぼす『公害』」と訴えた。
被告の国側は「防衛相は防衛戦略上、高度な専門技術的判断で自衛隊機を運航しており、広範な裁量が与えられている」と反論した。
最高裁は、二審判決が認めた16年末までの将来分の損害賠償についても、不服とする国側の上告を受理している。判決では自衛隊機の飛行差し止めとともに、この点についても判断を示すとみられる。
一方で最高裁は、騒音被害の大半を占める米軍機については飛行差し止めを求める住民側の上告を退け、弁論の審理対象から排除した。
◆厚木基地第4次爆音訴訟 厚木基地の周辺住民が軍用機の飛行差し止めと騒音被害への賠償を国に求め、2007年12月に提訴。1976年から続く訴訟の4度目で、原告数は計約7千人。従来の民事訴訟に加え、公権力行使の適否を争う行政訴訟でも軍用機の飛行差し止めを求めた点が特徴。行政訴訟は自衛隊機で効果を発揮し、一審、二審判決とも夜間早朝の飛行差し止めを認めた一方、米軍機に関しては「訴訟の対象となる行政処分が存在しない」として請求を退けた。また民事の損害賠償で二審判決は、2016年末までの「将来分」を含む計94億円の支払いを国に命じた。