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コロナ禍とギャンブル 「賭博大国」の行方は

社会 | 神奈川新聞 | 2020年5月25日(月) 05:00

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、自粛生活を強いられる中、外出する人や営業を継続する店舗を、事情や補償を度外視して敵視する傾向が強まる。とりわけ、パチンコ店や来店客への批判は激しい。だが、ギャンブル依存症を長く取材するフリーライターの古川美穂さん(55)は、本質を冷静に見極める。「国内に元々あった依存症の問題が、コロナ禍で可視化されたのだ」、と。そして、懸念する。それでもなお、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を再考しようとしない、国や地方自治体の行く末を。

【動画】「カジノやめてコロナ対策」 誘致反対、無言の抗議

「心の避難所」


ギャンブル依存症について取材を続けている古川さん(本人提供)
ギャンブル依存症について取材を続けている古川さん(本人提供)

 4月29日。横浜市内のパチンコ店には、開店1時間前から列ができた。その前日、県は新型コロナウイルス特措法に基づき、休業要請に応じない6店舗の店名を公表したが、3店舗が翌日も営業した。

 店名公表は、大阪府を皮切りに、神奈川や東京など全国の自治体が続いた。公表された店舗からは「なぜ、パチンコだけ。『いじめ』と変わらないことを行政がしている」との声も上がった。

 古川さんには、全国で散見されるこの光景が、8年前に自身が目にした東北の光景と重なって見えた。

 東日本大震災から1年後の2012年3月。岩手、宮城、福島の被災地3県に足を運んだ。いち早く営業を再開したパチンコ店が連日、満員になっている様子が報道されたからだ。来店客は「義援金や東京電力からの賠償金をギャンブルに使っている」と批判されてもいた。

 だが、実際に現地で見たのは「津波で自宅や職場を失い、居場所を求めて来店する被災者の姿だった」。

 仮設住宅と隣り合わせのパチンコ店に足しげく通い詰める老夫婦、震災関連の業務が増えて多忙を極める中、勤務時間中に姿を消す教員…。

 話を聞いた人々は、ひと山当てようともくろんでいるわけではなかった。狭い仮設住宅で家族と身を寄せ合ってじっと過ごし、テレビをつければ津波の映像が繰り返し流れる。パチンコ台に向かっている間だけは、何も考えずに済み、つらい現実を忘れられた。古川さんは回顧する。「善悪は別として、被災地では『心の避難所』のような役割をパチンコ店が担っていた」

 それは今、窮屈なコロナ禍の暮らしにも重なる。見えない敵におびえて外出を控え、新聞もテレビも感染症の話題ばかり。重苦しい空気が支配する日常で、住環境や家族との関係も良くなければ、巣ごもり生活はより一層、多くのストレスをはらんだものになる。古川さんはそこに、誰もが依存症に陥る危険性をみる。

世界でも突出

 実際東北では、震災を機に依存症になった被災者が増えたという。

 
 

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