新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の継続が決まった神奈川。1カ月以上にわたり苦境に立たされてきた飲食店や居酒屋などからは、落胆の声と悲鳴が相次いだ。「すでに我慢の限界」「延長されたらつぶれる」。冷たい雨がぱらついた21日、横浜市内の繁華街が再び不安に包まれた。
臨時休業の張り紙が目立ち、酔客の姿はほとんどない。飲み歩きの街として知られる横浜・野毛地区は、かつてのにぎわいが遠のいたままだ。
長引く休業に疲れの色を濃くした店主らは「政府は何もしてくれない」と悲鳴を上げる一方、将来への不安から再開を模索する動きも。休業を続けるか、再開するか─。ジレンマに直面している。
「休業するよりも、赤字覚悟で店を開きたい」。3月に開業20周年を迎えた居酒屋はカウンター席で接客しながら、名物のもつ煮や鶏の唐揚げなどのテークアウトを始めた。
県の「協力金」10万円は自主休業の店にも支給されるが、店主は「いつ受け取れるかも分からず、到底やっていけない。客足はわずかでも毎日収入があった方がいい」と胸の内を明かした。
一方、カラオケスナックのママは宣言翌日の4月8日に「休業」を決めた。扉には休業中の張り紙を掲げているが、常連客に限定して26日にひっそりと再開。来店前にLINE(ライン)で予約を受け、「密」を避けながらカウンターで接客する。
「店が感染源になり、信用を失ってはいけない」と休業に踏み切ったが、申請した協力金の支給日も分からず、2~3カ月収入が途絶えると経営が持たないと常連客に声を掛けた。「場末のスナックをいつまでも休業させる政策が果たして正しいのか」。政府への憤りを隠せない。
4月中は9割近くが休業していた野毛地区だが、5月中旬ごろから営業を再開する店が増えてきた。大半は午後8時に閉店するものの、看板や照明を消して夜間も営業を続ける居酒屋やスナックもある。
野毛飲食業協同組合の理事長は、必死で苦境を乗り切ろうとする飲食店を気遣った上で話した。「気の緩みが生じて感染が再び拡大することが心配。『3密』など接触を減らす状態を続けたい」
早期解除求める声 横浜駅西口
横浜高島屋が18日から営業を再開し、人通りが増えつつある横浜駅西口周辺だが、飲食店に客足は戻らず、関係者から早期の宣言解除を求める声が上がった。