
県立がんセンター(横浜市旭区)は、増加傾向にある前立腺がんの治療に特化した診療体制を整える。泌尿器科、放射線治療科など複数の診療科を束ねる「前立腺センター」を立ち上げてチーム医療を強化するほか、最先端の手術支援ロボット「ダビンチ」も導入。個々の患者に合わせた多様な対応を図ることで早期治療に役立てる方針だ。
従来、複数あった窓口を一本化。健診や人間ドックなどで前立腺がんの疑いが出た人に精密検査の案内を速やかに行えるようにする。各診療科の連携が密になることで、腹腔(ふくくう)鏡手術、重粒子線治療、薬物治療といった幅広い治療法を効率的に提供できるという。

先端技術の導入にも期待がかかる。新たに取り入れる「ダビンチ」は術後の傷口や出血量を少なくすることが可能。前立腺センター長に就任する岸田健泌尿器科部長は「体への負担が軽減され、機能温存の可能性も高まる。また、技術的に難易度が高い手術もより繊細に、ぶれなく行うことができる」と力を込める。
前立腺がんは中高年男性に多く、高齢化の進展で罹患(りかん)者が急増。国立がん研究センターなどのチームは、食事内容が欧米型の傾向が強い人は、発症のリスクがやや高いとの研究結果もまとめている。同センターの推計で、2015年に男性のがん罹患数で1位に上っており、死亡数は肺がん、胃がんなどに続く6位で、1万2200人とされている。
前立腺センターは3日に開設。週3回専門外来を設けるとしており、岸田部長は「前立腺がんは今後も増加が続く。転移で亡くなる方も少なくない。一人でも多くの命を救える体制を整えていきたい」と話している。