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関東大震災の記憶、AIでカラー再現 95年前の教訓、SNSで発信

社会 | 神奈川新聞 | 2018年9月2日(日) 09:51

(左)関東大震災直後を写した横浜港新港ふ頭の絵はがき(防災科学技術研究所提供)、(右)震災の惨状が生々しく伝わるカラー化した絵はがき(東京大学渡邉英徳研究室提供)
(左)関東大震災直後を写した横浜港新港ふ頭の絵はがき(防災科学技術研究所提供)、(右)震災の惨状が生々しく伝わるカラー化した絵はがき(東京大学渡邉英徳研究室提供)

 1923年9月1日に発生した関東大震災の被害状況を撮影した白黒写真を、人工知能(AI)を使ってカラー化する取り組みが進んでいる。東京大学大学院教授の渡邉英徳さんが中心となり、カラー化した写真はツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で発信。95年前の教訓を「わがこと」として若い世代にも共有してもらう狙いだ。


関東大震災直後を写した横浜港新港ふ頭の絵はがき(防災科学技術研究所提供)
関東大震災直後を写した横浜港新港ふ頭の絵はがき(防災科学技術研究所提供)

震災の惨状が生々しく伝わるカラー化した絵はがき(東京大学渡邉英徳研究室提供)
震災の惨状が生々しく伝わるカラー化した絵はがき(東京大学渡邉英徳研究室提供)

 「白黒写真に写されたような過去の災害は、今の人々から『よそごと』と受け止められている」。災害情報のデジタルアーカイブに取り組む渡邉さんは「白黒写真ゆえに、現在までの災害対策に十分に生かされてこなかった」と指摘する。

 古い写真をカラー化することで人々の記憶を掘り起こし、未来へつなげたい-。渡邉さんは「記憶の解凍」プロジェクトに2010年から着手した。早稲田大教授の石川博さんらが開発したAIによる自動色付け技術を応用した。

 渡邉さんは毎日、災害や戦争関連の写真をカラー化してツイッター(@hwtnv)で発信している。防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が所蔵する関東大震災の記録写真のカラー化も進め、8月30日は被災直後の横浜港新港ふ頭を写した絵はがきを公開。多くの反響が寄せられた。

 協力した防災科研総合防災情報センター長の臼田裕一郎さんは「過去の事実を現在や未来にも起こり得るものとして現在の人々が驚きと関心を持って認識し、防災を考えるきっかけになれば」と期待する。

 横浜港に詳しい横浜みなと博物館(横浜市西区)学芸課長の志澤政勝さんは「震災による港の惨状がより生々しく見え、重大さが感じ取れるのではないか」と評価。一方でカラー化には「対象物の材質や当時の一般的な色彩などの調査、研究が前提で正確な着色が求められる」と指摘した。

 AIが選んだ色合いは実際と異なる可能性がある。そこで渡邉さんは、AIによる着色後に資料や証言を基に手動で補正する作業に重きを置く。

 ツイッターではカラーと白黒の写真を必ずセットにして公開。返信や転送機能を活用して多くの人々からの情報提供を通じて正確な色に近づけるほか、写真にまつわる新たな証言を得る機会にもなるという。

 原爆投下前後の広島や長崎、戦時期の沖縄の写真もカラー化を進め、ツイッターや高校生らの取材を通して証言を集めた。「ツイッターが災害や戦争体験を共有する新たな空間となり、記憶を継承する場となりつつある」と力を込める。

 渡邉さんは11月5日にフランス・パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部で開催される「記憶と災害」をテーマにした国際フォーラムで講演し、この取り組みを発表する。

 
 

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