
【時代の正体取材班=石橋 学】95年前の関東大震災直後に横浜市内で横行した朝鮮人虐殺の歴史を知り、継承する催しが1日、横浜市内で行われた。虐殺の事実を否定する言説までが流布する中、参加者はフィールドワークや追悼式典で加害の歴史を追体験し、「二度と繰り返さない」との思いを刻んだ。
虐殺の現場となった南区などを巡るイベント。案内役の元中学教員、後藤周さんは約30人の参加者を前に力を込めた。「過去から学び、子どもたちに伝える手だてを取り戻さなければならない」
横浜市で加害の歴史の矮小(わいしょう)化が現実のものとなったのは2015年。自民党市議が口火を切り、市教育委員会は中学生向け歴史副読本の記述を「虐殺」から「殺害」に書き換え、官憲の関与を記した一文を削除した。この年から毎年フィールドワークを続ける「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」の北宏一朗代表は「虐殺の責任を誰も問われないままこの国はアジア侵略に突き進み、破局を迎えた。反省どころか歴史が正当化され、在日コリアンへのヘイトスピーチや災害のたびにヘイトデマが横行するいま、同じ破局へ歩を進めている」と訴えた。
フィールドワークでも訪れた、横浜市西区の久保山墓地の慰霊碑前では「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会」が追悼式典を開催。文書に残る証言などから95年前の惨劇を再現した朗読劇を披露した。「いつまで差別されなければいけないの」。川崎市内で続くヘイトデモに苦しめられている在日1世のおばあさん(ハルモニ)たちの悲痛な嘆きを紹介し、いまも続く問題であることがここでも強調された。